その12 テクニック

ジャズを習っても、ピアノの弾き方というものは、なかなか教えてもらえない。

その先生が、高校生くらいからピアノを始めた方で、ほとんど独学だったからだ。

しかしテクニックは明らかに素晴らしく、「僕は指が本当に動かなくて、こんなタイプやこんなタイプの演奏ができないんだよね」と言いながら、今できないと言った演奏例を、実に見事に弾くのだ。

「クラシックでいう、ハノンやバイエルみたいな、基礎練習になるようなものはジャズではないのですか?」

と聞くと、ほぼないような返答が返ってくる。(今では、音源付きの素晴らしい教則本がたくさん出ているので、やる気があれば、いくらでも練習方法はある)

電子オルガンをやっていた時も、楽譜をひたすら練習している感じで、ほとんど運指の基礎練習というのはなかったので、インプロヴィゼーションは勿論だが、自分はそこがすごく気になっていた。

ただ、すごく大事なことをいくつか教えてくれた。それは、

・鍵盤を弾く時は、スタッカートで弾くイメージで。

・フレーズを弾く時は、基本レガートを意識して。

・クラシックと違い、「音を抜く」演奏技術がある。

・リズムが入ってから、アドリブを弾く時は、基本サスティーンペダルに頼らない。

などだ。

「スタッカートのイメージで弾く」というのは、例えばボクシングで良いパンチを打つコツは(昔テレビでやっていたが)、「打つ」よりその後の「引く」を意識することが大事で、それによって「打つ」動作がよくなるらしい。それと同じような理由だと思う。走る時だって、速く走りたければ、地面を踏む瞬間ではなく、蹴る瞬間を意識しているはず。考えてみれば、大体のことに応用できる。ピアノの場合は、スタッカートの「鍵盤から指を離す動作」を意識することで、弾く動作がちゃんとできるようになる、ということだ。

「レガートで弾く」のと「スタッカートで弾く」というのは、一見相反することだが、スタッカートで弾く時の「打鍵」を意識しながら、そのまま音を伸ばしたままフレーズをつなげて弾いていけばいい。とにかく「打鍵」はスタッカートの時のイメージでやることが大事だ。

「音を抜く」というのは、クラシックの場合、音の強さを均一にして弾くのが基本だが、ジャズの場合、裏拍にアクセントが来るように弾くことも多い。16分音符が並ぶようなフレーズなら、たとえば「ドレミファ / ソラシド」と2拍弾く場合、「ファ」と「ド」を強く弾き、その他の音は、流すように、それほど強く弾かない。場合によっては、ほとんど聴こえないように弾くこともある。これを「音を抜く」というらしい。

ジャズでもプレイヤーによって個性があるので、クラシックの素養の高い人と、最初からジャズから入っている人だと、この「音を抜く」バランスはかなり違う、どちらが良いとかではなく、それが個性で、カッコよければ正解だ。

サスティーンペダルは、独学の時に、サスティーンを多様するところから即興演奏がなんとなくできるようになったところがあるので、よく気をつけないと、ついついペダルを踏んで弾いてしまう。クラシックは勿論だが、それに頼らなくても、まず良い演奏ができることが大事だ。

もちろん、絶対だめというわけではなく、「ここぞ」という時に使えばいいし、ジャンルによっては(個性としてそれが望まれるなら)、多様するのも全然ありだ。

このように、かなり大雑把で、最低限度のことかもしれないが、ピアノを弾く時の最低限のことを教えていただいた。特に「スタッカート」「レガート」というのは、「野球のピッチャーの原点は外角低め」というのと同じくらい、ものすごく大事なことかもしれない。

今はいろんな動画が簡単に見れる時代なので、著名な方が実際に弾いている場面も、すぐに確認できるが、みんなすごく個性が強い。模範的に美しい運指の人もいれば、「その運指で何故こんなに素晴らしい演奏になるんだろう」と驚くような人もいる。それも含めて面白い。(ちなみに、僕が好きなDavid Benoitさんの運指を初めて見た時、曲や容姿から想像していたものとピッタリ一致していた。)

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