話すのが苦手なのがコンプレックスだった その2

前回の内容

自信のなさ、就職の失敗なども相まって、20代前半~30過ぎくらいまで、人前で話すことにとても苦手意識を持っていた自分に、音楽専門学校で講義をするという転機が来ました。

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2007年から、音楽専門学校で講義を持ち、大人数の学生さん達に教えるようになったのは良いのですが、今までが今までなので、やはり緊張の連続でした。

最初のうちは90分の授業用のカンペを作り、少し自分の言葉にアレンジして、それを読みながら、という感じでしたが、「ああ、上手くできなかったなあ・・・」みたいに授業後に思ってばかりでした。

そのうちに、なんとなく気付いてきたことがありました。それは、自分は「間違えずに上手に話そう」ということに、すごく気を取られている、ということでした。上手に話そう、間違えずに話そう、と思えば思うほど、大事なところで噛んだり、言うことに詰まってしまうことが多かったのです。

それで、はっきりいつとは覚えていませんが、少しずつ考え方を変えていきました。

(この記事の趣旨は「専門学校で教えること」ではないので、ここからはもっと大きな枠で、普段の生活も含めて、どうやって人前で話すことの苦手意識を克服していったか、ということを書いていきます。人前で、だけでなく、純粋に人との会話でも大切だと気が付いたことも書いていきます。)

まず、「自分はプロのアナウンサーじゃないのだから、上手く話そうと思うのはやめよう」と思いました。そして、話が下手であっても、文法的に少しミスがあったとしても、自分の伝えたいことがちゃんと相手に伝わる、それができていればいいじゃないか、と思うようになりました。考えてみれば、人は別に、上手で小難しそうな話を聞きたいとは限らないですよね。

(これは実は、2010年の冬、近くの文化会館でASKAさんがコンサートをやった時、自分も観に行ったのですが、その時のMCを見ている時に思ったことです。ASKAさんは決して話し下手ではありませんが、改まった話し方をするタイプではありません。独特の比喩も使うし、時々いろんな方面へ脱線することもありますが、話を聞き終えた時には不思議な位、何を言いたいかがすごく伝わってきました。因みにコンサートは素晴らしく、アンコールでは和田アキコさんの「あの鐘を鳴らすのはあなた」を歌われましたが、本当に素敵な時間でした)

そして、話に時折、「間」ができてしまうこと、、これがいつも怖かったのですが、、ある時、ふと考えました。音楽の場合、たとえばジャズなどは、インプロヴィゼーションの時、、プレイヤーが交代する時やソロの途中でも、かなり「間」が空く時がありますが、それって聴いている方は、実はそんなに気にしていなくて、むしろ臨場感があったり、それに「間」を上手に使った演奏は高く評価されますよね。

話す、ということも、そうではないか、と考えるようになったのです。「間」が空いたら、それはそれで、その「間」も、話の一部分だと考えるようになりました。

また、プロ野球など観ていると、ピッチャーが時々、バッターのタイミングを合わせないようにするために、間合いを外して自分のリズムで投げようとする時がありますが、それと同じで、周りに振り回されずに、自分のペースをくずさないで話そう、と思うようになりました。もちろん、話すことの場合は、相手ありきであることが前提です。

そして、、これはどちらかというと、人前で話す時だけでなく、人との会話でもとても使えることなのですが、、話に詰まりそうになる時、、これも音楽を応用していきました。話す、ということは、音楽でいう、インプロヴィゼーションや作曲に似ている、と思います。インプロヴィゼーションや作曲は、基本は、一つの小さなフレーズ(モチーフといいます)を元に、ある時はそれを繰り返したり応用したり、ある時は全く違うモチーフを使いながら、どんどん展開していくのですが、「話す」ということも、それと同じじゃないか、と思いました。

たとえば、「今日はとても暑いですね」と相手が言った場合、天気にまつわることを考えていきます。「そうですね」と返しても良いですし、「昨日は涼しくて過ごしやすかったのに」でも良いし、「こんな暑い日に仕事に行きたくないですよね」でも、「昨年の今頃は・・・」etc… 考えてみれば、いっぱいありますが、そうやって話を広げていきます。

人前でのスピーチの場合、そのようにどんどん自分で関連する話を広げながら、最後のまとめにつなげていけばよくて、誰かと会話している時は、こちらが何かしら返せば、相手もおそらく何か返してくれますので、またそこから広げる、というのでやっていけばいいと思いました。(しかし、時々「今日はとても暑いですね」「ふーん、それで…」みたいに返してくる人も中にはいますが 笑)

最後に、、僕は元々は、人前で話すのが苦手ではありませんでした。つまり、以前は普通にできていました。「一度できたことは、(老いや病気などによってできなくなる場合を除けば)これからも先もできる可能性がある」と考えるようになりました。

そういうふうに、「上手に話すより、言いたいことが伝わること」「『間』も話の一部、自分のペースをくずさないで話すこと」「一つの事柄から何でもいいので関連することを使って、話を広げていくこと」「過去に一度でもできたことは、これからもできる可能性はある」etc… を意識していくと、、話すのが苦手、ということを、少しずつ、あまり自分の中で感じなくなっていきました。もちろん、人前で話すのは今でも緊張しますし、今でも話し上手なキャラではありませんが 笑、自分のペースで落ち着いて、ということを意識すれば、そんなに恐れることはない、と思うようになりました。

そして、一番大切なことは、「相手の気持ちを考える」、会話ならば「相手の話を心から聞いて、返していく」ということだと思います。それができれば、人と話す、人前で話す、ということは、そんなに悪いものじゃないのではないかと思います。

「音楽以外、取り立てて何もない自分」に引け目を感じて、それで失敗をして、話すことがとても苦手になった時、それを克服するためのヒントをくれたのも音楽でした。本当に音楽に感謝です。

p.s

疲れた時、リラックスしたい時は、こちらの方もぜひ聴いてくださいね!

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