オールディーズバンドの仕事は、持ち曲が2,000曲、一日の営業だけでも100曲ほど演奏する。余程慣れた人でないと、いきなり入ってすぐに演奏するなんてことはできない。なので、数日、営業前のリハーサルの時間に、新人のための練習時間を作ってくださった。
オールディーズと書いたが、実際はその他にも、スタンダード・ポップス、ジャズ、ロック、ソウル、ファンク、ハワイアン、シャンソン、ラテン、ブロードウェイ・ミュージック、クラシック寄りインストルメンタル、そして日本の歌謡曲、演歌、グループサウンズetc… デジタル音楽以外の、ありとあらゆるジャンルの音楽を演奏する。
それまで、バンドをやっていた時のように、1ステージで5曲とか10曲なら、それなりのクオリティで演奏できる。でもこれだけ膨大なレパートリーを、その場で指図されたらすぐに演奏しなければならない。もちろん高いクオリティが要求される。
また、通常のライブハウスは、主役は演奏者だが、このお店の主役はお客様だ。自分が目立つことより、お客様のために演奏することが大切だ。
先輩方の、リハでの演奏を聴きながら、上手いものだなあと感心していたが、その中でも、「これできるかなあ・・・」と思ったのが、ビリー・ジョエルの「New York State Of Mind(ニューヨークの想い)」だ。
4リズムのバンドで、この類の曲を演奏する、というだけでも当時はびっくりしたのだが、イントロで1分程、すごく雰囲気のあるピアノソロが続く。最初に一人だけで、これをお客さんの前で演奏するのかと思うと、弾きがいがある、というより、「うわあ、できればやりたくないなあ」と正直思った。曲自体はとても素晴らしかったが、好きとか嫌いとか思っている余裕は全くなかった。
「New York 〜」は、実際に弾いてみると、幸い、キーがCメジャーだったので、かなり助かったのだが、本番で最初のうちは、「ニューヨーク!」と指示されると、「うわ、きた・・・」という気持ちだった。
いろんなダメ出し、アドバイスをいただきながら、膨大な譜面にメモを取っていき、渡されたカセットテープをMDに録音しながら聴きつつ、、そんなこんなしているうちに、初めて営業で演奏する日が近付いてきた。曲は全て覚えきれていない、間に合うかな。
「その18 Billy Joel / New York State Of Mind」への3件のフィードバック