「こんなのはジャズじゃない!」という言葉に含まれる、二つの意味

プロであろうとアマチュアであろうと、音楽を真剣にやっていく過程で、一度は通過する言葉で、「こんなのはジャズじゃない!」「こんなのはロックじゃない!」という言葉があると思います。音楽をやっている方で、今これを読んでいる方も、一度は聞いたことがあるのでは、あるいは自ら発信したことがあるのではないでしょうか? (ここでは便宜上、ジャズ、ロックと書いておりますが、この他にも、フォーク、ファンク、ソウル、R&B、テクノ、EDM、演歌 etc… ありとあらゆるジャンルで使われる言葉だと思います)

要するに、J-POPなどのヒットチャート以外にも、洋楽やいろんなマニアックな音楽を聴くようになっていく途中過程で、いわゆる、大衆向けに耳馴染みの良い、心地良く作られた音楽の原型になっている音楽に触れる機会が増えてくるのですが、そういう音楽に触れることによって、今まで聴いてきた音楽を、必要以上に、原型の音楽に比べて「商業主義に走った劣るもの」と捉える時期が出てくるわけですね。

そして、そのような時期に、ガチガチのロックやジャズなどを聴き込んでいくと、それ以外のものは認められないという思考になることも多く、比較的ライトなファン層にも受け入れられるような作りをしている、ロックやジャズを聴いた時、先に述べたような言葉が出てくるのじゃないかな、と思います。

そして、これらの考え方が却って、自由で枠を超えていくべき筈の、ジャズやロックを、音楽に対してマニアックな人達の、理論や知識の拠り所のようなものに落とし込んでしまい、却って自由で幅広い思考ができなくなっていくことがある、僕はそう思います。

(ここから先は「こんなのはジャズじゃない!」に統一します)

実際、評論家に「こんなのはジャズじゃない!」と言われたことのある、著名なプレイヤーの大半は、ストレートアヘッドなジャズを弾こうと思えば弾ける人がほとんどで、でも自分のスタイルを築いていてファンもそれを期待していて、そこを大切にしたいから、そういうふうに演奏している場合が多いのです。考えてみたら、評論家よりずっと音楽の実践経験も多く、修羅場をくぐってきた人達が、ジャズについて評論家よりも深く知らない、なんてことは普通はありえないですよね。(決して評論家の方を馬鹿にしているわけではありません)

しかし、「じゃあ、あなたはそういうふうに思うことはないのか?」「『こんなのはジャズじゃない!』という考えは悪なのか?」「なんでもかんでも音楽は同じレベルで高尚で、そこに優劣はないのか?」と問われたら、正直、そうだよなと思うことも結構あるような気がするのです。

今までにも何度か書きましたが、自分がまだ学生の頃、音楽理論も全く分からないまま、エレクトーンをやっている頃になんとなく覚えた「響き」を元に、軽音楽系サークルでキーボードを演奏していたことがありました。当時、即興演奏ができるキーボーディストはサークル内にはあまりいなくて、少し得意になりながら、先輩方のジャズ・ファンクバンドに選抜されて、弾いたことがありました。

しかし、、その時のライブの演奏をカセットテープ(!! 当時はカセットテープなのです 笑)に録音したものを聴いた時に、愕然とする程、自分の演奏がカッコ悪く、何もできていないことをはっきり感じました。それこそ、まさに「こんなものはジャズじゃない!」でした。

(その時の即興部分の演奏 当時19歳 ※ もし何か問題になるようなことがありましたらすぐに消します)

そこで、もし自分が「これはフィーリングで弾いたものなんだ。これが自分にとってのジャズの表現なんだ、音楽に優劣はないんだ」という思考になれば、また違う音楽性になったのかもしれませんが、正直、そうならなくてよかったと思っています。なぜなら、本当にそれは誰が聴いてもイケていない、自分でジャズっぽいと勘違いしているだけの演奏だったからです。

そこから僕は、ジャズの基本的なコードの押さえ方や響き、ブルースやそこで使える基本的なスケール、コーダル、モーダルな曲の演奏法etc… 先生についてマンツーマンで一年ちょっと習うことになりました。とても教えるのが上手な先生でした。正直それほどジャズとしてのアプローチはその時は上達しなかったのですが、聴音、耳コピーが格段にできるようになり、それまで自分の中で苦手意識のあった、作曲について開眼しました。(ジャズがなんとなく弾けるようになったかな、と自分で思えるようになったのは、その10年後くらいです。本当になんとなく、ですが 笑)

ここで僕が言いたかったのは、本当に自分が未熟なために表現したいことがしきれていない時に「こんなのはジャズじゃない!」というような言葉を、聞いたり自分で感じた時は、それを素直に受け止めて、正面から真摯に取り組んでいくことは、それもとても大切なことなんじゃないかな、ということです。

そこで「音楽に優劣はない」と自分で思ってしまっては、自分自身が大きく成長するチャンスを逃してしまうことも生じてくると思います。もちろん、自分が今の自分の表現を気に入っていて、確信的にそういう表現をしようとしている場合は全く別です。

「こんなのはジャズじゃない!」「こんなのはロックじゃない!」、、、一笑に付した方が良い時もあれば、時には誠実に向かい合うことも大切な、、、とても深い言葉なのかもしれません。

でも、、自分がめちゃくちゃ好きなミュージシャンがしたり顔でこれを言われたら、やっぱり腹立ちますよね 笑  音楽は「聴いた人の人生を支え、彩っていく」という、大切な役割を担っていることを、常に忘れずにいたいと思います。

p.s

疲れた時、リラックスしたい時は、こちらの方もぜひ聴いてくださいね!

https://linkco.re/gGAqRbFa?lang=ja

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「こんなのはジャズじゃない!」という言葉に含まれる、二つの意味」への2件のフィードバック

  1. ごぶさたしてます。記事にでてくるジャズ・ファンクバンドの首謀者・山田です。
    その後の活躍すごいね!自分のことのように喜んでますよ。
    懐かしい音源ありがとう。あのバンドも楽しかったなぁ。久しぶりにベース弾きたくなってきたよ。

  2. 山田知道さま

    おお、山田知道さん、すごくご無沙汰しております。こんなところまで来ていただき、どうもありがとうございます! 学生時代は、本当にお世話になりました。
    そういっていただけて恐縮です。まだまだなのですが 笑 勝手に音源載せてしまいすみません。あのバンドは自分の中で、音楽との向き合い方の転機になりました。でもそう思えたのは、あのバンドが練習も本番もすごく楽しかったからで、そういう空気を先輩方が作ってくださったおかげで、素直な気持ちで自分を見つめることができたのだと思います。またベースされると、きっと楽しいですよ!
    あと、おそらく他のSNSでもフォローくださり、ありがとうございます。これからもどうぞよろしくお願いします。

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