耳コピーのコツ その2 ~ 耳コピーの方法 ~

前回は、

1. 耳コピーをするための体力を付ける方法

について、書きましたが、今回はいよいよ、

2. 耳コピーの方法

について書いていきたいと思います!

自分は幼い頃から電子オルガンを習っていて、その時にジャズやフュージョンなどの名曲を、たくさん弾いていたのですが、楽譜通りに弾いていただけで、コードの知識などは全くといっていいほどありませんでした。(メジャー、マイナー、サスフォーを知っていた位です) 完全に響きだけで音楽をやっていましたが、特に天才ではなかった自分は、やはり壁に打ち当たりました。大学1年生の時に、ジャズファンク・バンドでキーボードを弾いたのですが、その時の録音を聴いた時に、全くカッコよく弾けていないことにショックを受けたのです。

そこから、ジャズピアノをマンツーマンで1年ちょっと、習うことになりましたが、その時はジャズ自体はすぐには上達せず、しかし、耳コピーの能力がすごく上がり、それまであまり得意でなかった作曲ができるようになりました。

おそらく、ジャズでよく使うスケールや、テンションノートの入ったコードやそれを使ったコード進行、コーダルやモーダルと言った概念 etc… を覚えたのが、ジャズとは違う部分で自分にはすごく役に立ったのではないかと思います。

ジャズピアノを習っていた頃に耳コピーした曲で、大好きなDavid Benoit さんのソロピアノの演奏がありました。「Remembering Christmas」というアルバムに収録されている、「The First Noel(邦題は『牧人羊を』)」という、クリスマスの定番ソングです。作曲者は不詳です。

当時の自分の耳コピー楽譜が、未だに手元にありましたので(!)、今回、この曲の、0:33 ~ 050 を題材として、耳コピーの方法を書いていこうと思います。今回はピアノ曲ですが、バンドなどのアンサンブルの場合も考え方は同じです。(耳コピーなので、今回は実際の音の通り、Dメジャー・キーのままで解説していきます

2. 耳コピーの方法

現時点では、どの高さの音程かなど、細かい点は省略させていただいておりますので、ご了承ください。後で譜面を載せますので)

①. 主メロを取る。

耳コピーで悩む人の多くは、おそらく、あまりにもたくさんの音が入っている曲の中で、どこから手を付けたらいいのか分からない、というのが原因だと思います。そういう場合は、曲を聴いていて一番印象に残るところ、やっぱりメロディから音を取っていけばいいのではないかと思います。今回の曲の場合、

  ファ#ミ | レーミファ#ソ | ラー レド# |シーレラシ | ラー |

  レド#シ | ラシド# | レラソ | ファ#ー 

となります。(最初の「ファ#ミ」はアーフタクト)

相対音感を鍛えていると、おそらくメロディが移動ドで聴こえてくると思います。この曲のように、ハ長調じゃない場合は、実際のキーに置き換えていけば良いのです。これだけでも、耳コピーの偉大な第一歩です!

※移動ドで取った音を、実際のキーに置き換えるのも、最初のうちは大変かもしれません。もし可能ならば、ハノンの39番を、普段から少しずつやることをお勧めします。39番を完全にその通りやる必要はなく、1オクターブの上昇、下降でも構いません。

②. ルート音を取る。

メロディの音が取れたら、次は、曲の一番低音を取ります。この曲はピアノ曲で、かなり低い音も使っているので、耳コピーする際は、ピアノなど低い音域まで出る楽器を使うのがよいでしょう。(同じ音が連続している箇所は、オクターブ違いの音です)

  レーシ | ファ#ーレ | ソー |ファ#ド#ド# |

  シラソ | ファ#ソミ | ファ#ーラ | レ ~

となります。

慣れてくれば、①と②は同時にできるようになってきますが、焦らず確実にやっていきましょう。ここまでできただけでも、だいぶ曲として格好が付いてくるのではないでしょうか?

③. 主メロに付いているハーモニーetc. を取る

よく聴いていると、歌ものの音楽でいう、メロディに対する「ハモリ」のような音が、ところどころ入っているのに気付くのではないでしょうか? そういう音を取っていきます。これらの音は、コードの構成音も担っています。

※()で括っている箇所は、和音になっていて、低い順に書いています。

  ラーシ | (ラド#) ーファ# | レー |レミー |

  ファ#ミレ | レレ(ド#ソ) | (レラ)ード# | ラ ~

④. ルート音よりも高い、アルペジオetc. コードを形成している音を取る。

④は③とセットで考えても良いのですが(③④でコードを形成している場合も多いので)、③よりもやや低めの音で、アルペジオなど、コードを形成している音を取っていきます。今回の曲はアルペジオですが、和音の場合もあります。

また、アルペジオとして考えた場合は、②のルート音も含めて形成されているとも考えられます。表記上は、そちらの方が分かりやすいので、ここでは、②のルート音も含めて、書いていきます。斜め太字にした音が、ルート音を除いたアルペジオの音です。(同じ音が連続している箇所は、オクターブ違いの音です)

  レラファ#ー(シ) ー | ファ#ド#ラド#レー |ソシー |ファ#ド#ード#ー |

  シラソ | ファ#ソミ | ファ#ーラ | レ ~

⑤. その他、気付いた音を取る。

①~④までで、大体耳コピーは完成しておりますが、後で確認してみて、ちょっと音が抜けているのではないか、取り違えているのではないかと、確認していきます。なければOKです。

⑥. 耳コピーの際、必ずコードを表記しておく

ここで意外と大事なことは、音を取ったら終了ではなく、ポップスの場合は可能な限り、コード進行を表記しておくことです。そうすることによって、ただ単に耳コピーした音を弾くのではなく、音楽的に今何をやっているのかを、確信しながら弾けるようになり、また自分が作曲する時にも、それが生かされていくようになります。なにより、実際に演奏する時にコード譜として使えます。

今回の場合は、こんな感じになります。

  D – G/B | F#m – D | G | D/F#・A/C# |

  Bm・A・G | D/F#・G・A7/E | D/F# – A7 | D ~

コードを弾いているだけでも、クリスマス!って感じがしてきますね!

コードですが、実際は ①の段階から同時進行で、何であるか考えていくことが多いです。普段から、メジャー、マイナー、セブンス、マイナー・セブンスetc… 其々のコードを鳴らした時の「響き」を体で覚えていくことにより、曲を流した時に、何のコードを使っているか、感覚的に分かってくるようになっていきます。

また、弾き語りやバンド譜などを作る場合は、今回のように全ての音を完全コピーせずに、⑥のようなコード譜を作って、最低限のキメやイントロetc… その通りに弾かなければいけない部分だけ、五線紙に音を書き込んでいくことも多いです。

これで耳コピが一通り完了ですが、ここまで僕が文字で書いたメロディだけだと、あまりにも大雑把で分かり辛すぎると思いますので(笑)、学生時代に僕が書いた、説明した箇所の譜面を、ここに貼り付けたいと思います。

0:33 ~ 0:50 の譜面一段目4小節目3拍目から、アーフタクトで入っていきます。

このようになります。

今回は便宜上、①~⑥までの過程を、8小節まるっと音を取って解説していますが、実際はこの作業は、1 or 2小節くらいの短い小節単位でやっていくことが多いです。少しずつ音を取りながらコードも把握して、実際に自分でも音を鳴らして確認していくことが大切です。

では、バンドなどのアンサンブルの場合はどうでしょうか?

その場合は、今回のようにピアノ一台でやっている役割を、複数の楽器で分担している、と考えていけばいいと思います。大まかには、

  ① メロディ

  ② ベース

  ③ ハモリ

  ④ コード楽器(③④は逆も有り)

  ⑤ その他(ストリングス、ブラス、シンセのシーケンス、効果音etc…)

という感じで取っていけば良いでしょう! (一応、順番にしてありますが、実際には聴き取りやすい音から取れば良いとと思います)

あれ、ドラムが抜けていた! ドラムの場合も同じような要領で、バスドラムとスネアドラムを基本に、ハイハット、タム、クラッシュシンバル、パーカッション etc… 各打楽器の音を聴き取っていけばいいと思います。音程のある楽器の時にコードの知識があると便利なように、ドラムの場合も、基本的なリズムパターンの知識もあると良いですね。

まとめ、コードの重要性

最後に申し上げますと、今回、例に出した、David Benoit さん編曲の「The First Noel」は、耳コピー初心者の方の多くにとっては、かなり難易度の高い曲だと思います。なので「え、こんな曲の音が聴き取れるのが普通なの?」と思った方、全然安心してください。(自分は好きが高じてできただけなので 笑) 逆に、この曲の音が現段階で余裕で取れる人は、耳コピーにかなり自身を持って良いと思います。

記事を書いてみて、耳コピーはやはり、コードをいかに聴き取れるか、というのが大事になってきそうです。コードがちゃんと聴き取れていれば、各楽器の動きも無理のない、ナチュラルなものとして、正確に音が取れるようになるからです。自分の音感の良さだけでは困難なことも、ある程度「予想して」いくことができます。逆もまた然りで、コードがどうしても分からない時は、音感を鍛えておけば、聴こえてきた音をそのまま取っていけばいいのです。

基本的なコード進行を覚える、各コードの構成音と、和音で押さえた時の響き(コードの持つ個性)を覚える、トニック、ドミナント、サブドミナントetc… コードの機能を覚える、また、このコードの時にはこういうスケールが使える、この音はやや注意して使うといった、アヴァイラブル・ノート・スケール や、アボイド・ノートの知識を身につけるetc…  やっぱり、覚えることはなかなか沢山あって、まさに「音楽に王道なし」ですね 笑

とはいえ、ほんの少しでも、耳コピーのコツを覚えたり、相対音感を鍛えたり、コードなどの音楽理論を覚えることによって、音楽的表現の可能性はかなり広がります。好きな曲のコピーだけでなく、自分で作曲したり、アレンジしたり、演奏技術も大幅にアップしていくと思いますので、この記事を読まれた方、もしよかったら、ここに書いてある方法を自由に利用していただけると、とてもうれしいです!

やや早いですが、皆さん、良いクリスマスを!

p.s

よかったら、こちらの方もぜひ聴いてくださいね!

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