楽曲が採用される時

音楽、特にJ-POPを仕事にしていて、まだ駆け出しの方の中には「どうやったら曲が採用されるのか?」といったことが、気になる方が多いのでは、と思います。

正直な話、僕も「完全にこうだ!」という自信がありません。それが分かっていれば、自分ももっと楽ができているはずなので 笑

ただ、僕の場合なのですが、「あまり一つのチャンスに固執しすぎずに、楽曲を書いている」というのがあります。この案件がだめでも、次の機会に陽の目を見るような楽曲を作る、ということを心がけています。

これは賛否両論があるかもしれません。このことをマイナスに捉えれば「頻用性の高い、没個性な楽曲」を作っていることになるからです。

でも、僕の場合は、作曲はどちらかというと「ジャズのスタンダードのようなもの」として捉えており、「誰が歌っても、アーティストの個性が光り輝くような楽曲」を作ることを心がけています。たとえば、スタンダードで有名なもので「枯葉」という楽曲がありますが、この曲は様々なプレイヤーが様々な解釈で演奏しています。そして、没個性どころか、演奏する人それぞれの個性が、存分に発揮されています。自分が作曲する時に根底にあるのは、そういう曲を作ろう、という気持ちです。(ちなみに「枯葉」は元々はジャズの曲ではなく、シャンソンの曲です。)

なので僕は、たとえばアイドルに書くから、アーティストに書くから、洋楽的だから  etc… あまりそういう部分で考え方を変えないところがあるかもしれません。もちろん、スタートラインとして、最低限、どの方向性にベクトルを向けるか、ということは考えます。意外と、洋楽的に作った楽曲を、アイドルグループが歌って合うこともありますし、その逆もあると思っています。

あとは、提案する際に、アレンジを含めてどれ位の完成度で出すべきか、も大事になってきます。基本、僕は可能な限り、(自分のその時のレベルの範囲ですが)「そのまま世に出しても良いレベルに限りなく近付ける」ようにしています。曲を書いた人がどんな能力があって、どういうところが得意分野なのか、仕事にどう向き合っているのか、なども先方様に聴いてもらえたらと思っています。でもこれは、制作時間の関係もあるので、提案時の時点ではどうしてもできないケースも、当然出てきます。

そういう時ですが、案件によっては「概形がクライアントさんに分かればそれで大丈夫」というものも、意外とあったりします。特にバラードなどに多いかもしれません。そんな場合は無理をせずに、シンプルに、でも相手の心に届くように作ります。どれがそういう案件なのか??? これは場数を踏んでいると、何となく分かってきます。

曲を提案するというのは、ある意味心理戦でもあるので、そういう部分でも賢くなっていくことが大切です。あっ、これは決して「楽をしろ ズルくなれ」と言っているわけではないです 笑  余談ですが、100点のものを作るつもりで90点の努力をすれば60点位のものしかできませんが、90点のものを作ろうとして90点の努力をすれば、90点、あわよくば100点のものができることも多いと思います。時間との戦いであることを考慮しながら、その中で少しでも最善の形でプレゼンしていくことが大切だと思います。(あくまでデモ段階でのクオリティの話です。音楽の骨格的部分はどんな時も100点を目指さなければいけないと思います)

あとは、デモに入っている歌なのですが、たとえば女性アーティストに提案する際に、男性ボーカルでもいいのか、またその逆もありか、歌詞はあった方がいいのか、ラララ~でもいいのか、、下手だけど自分で歌ってもいいのか、仮歌が入っていなくてシンセメロでもいいのか? etc… いろいろ気になるところではあります。

実は僕は、シンセメロ以外、全てのパターンで採用されたことがあります! でもこれも、案件によりけりです。性別全然関係ないデモでOKな時もありますし、ぴったり合わせなければならない時もあります。歌詞もあった方が良い場合と、「ない方がイマジネーションが膨らむ」という理由で、ラララ~の歌を望まれることもあります。また、「歌が入っていると雰囲気に流されるので、シンセメロで」という案件もあります。仮歌は、できれば上手い方に頼めたらいいのですが、下手でも味のある人は、オーダーに合っていれば自分自身で歌うのもありかもしれません。もちろん、その案件が、抜群の歌唱力が売りのアーティストの場合は厳しいですが 笑。

とはいえ、最近の流れとしてはやはり、「歌は性別も合っていて、歌唱力も抜群で、しっかりした歌詞も入っていて etc…」というのが当たり前のように要求されるケースが多いです。でもこれも、めまぐるしく変化している現代社会では、数年後は変わっているかもしれません。たとえば、「AIひばり」のような技術が飛躍的に伸びれば、デモ段階では仮歌を入れない時代が来る可能性もあります。(その時は、今現在仮歌を歌われている方は、また別の新しい形で音楽と関わるようになるのではないか、と思っています)

作曲の仕事は、一人でやっているようでいて、意外と人に協力していただくことが必要なことも多いのですが、こういう時に「(いろんな意味で)自分に合う人」を探すのが、実は一番難しいことなのかもしれません。これもヒントを言えば、「自分に合う人は、必ずしも皆が探している場所にいるとは限らない」ということです。普段から心のアンテナを張っていれば、思わぬところで素晴らしい協力者に巡り合うかもしれません。

あとは、意外かと思うかもしれませんが、すごく忙しい時に、ほんのちょっと他の人のために時間を作ったり、そういうタイミングで楽曲の採用が決まることが多いです。また、「ここは自分ができていないから、ちょっと勉強しなきゃ」と思って、重点的にそこを勉強したら、それ以前に作った曲が直後に決まる、ということも多いです。一見、目的に対して一直線に見えないことが、実は大切なのかもしれません。自分の経験として、曲を出した後で「採用されろ!」と強く思っている時が、一番採用されないです。

また、自分自身で「これはちょっと、先方のオーダーから少し外れているかな」と感じているけれど、とりあえずプレゼンしてみた、という楽曲が、意外と採用されることがあります。これはいつも思うのですが、一体なぜなんでしょう? 多分、発注書に文章として表しきれていない部分が、上手く満たされる、ということなのでしょうか?

僕の場合は、スタンダード・ポップスやジャズから入っているところがあるので、このような感じなのですが、人それぞれバックボーンは違うと思うので、今回の記事がどこまで参考になるのかは分かりません。実際、アニメソングの案件などは、かなり細部まで行き渡ったオーダーが出ることがほとんどなので、「どんなアーティストでも合う曲」というのはなかなか難しいものです。今クリエイターを目指している、またなられた方々は、ぜひ自分に一番合ったやり方を見つけて、多くの楽曲を世に出されることを、願っております!

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