作曲と編曲の境界線

「あなたの仕事は何ですか?」と聞かれたら、僕は「作曲家・編曲家です」と答えることが多いです。プロデュースも言えないことはないのですが、、もう少しちゃんとしたら 笑 と思っています。

作曲・編曲の仕事は、大雑把に言えば、

作曲:メロディ、コード進行を作ること。

編曲:作曲した曲に、伴奏を付けること。

になると、思います。編曲家は、アレンジャーとも言われます。

どこまでが作曲で、どこまでが編曲なのか、、、最近は境界線が曖昧な時があります。

作曲、編曲を、同一人物がやった場合は、話は簡単なのですが、そうでない場合は(つまり、複数の人間が携わっている場合)、その人達の間での、取り決めによって、決まるケースが多いと思います。

これは、あくまで僕が、自分の仕事の範疇で、考えていることですが、

作曲:メロディ、コード進行を作った人(作曲家)

編曲:最終的に、世の中に出る作品用の、データを納品した人(編曲家)

になることが多いと思います。個人間の取り決めによるものなので、当然、例外もたくさん出てきます。

0からの制作段階で、チームとして作品作りをした場合で、順番的に、先にトラック・メーカーがトラック(オケ)を作り、できたトラックに、別の人(トップライナーといいます)がメロディを付けた場合は、

作曲:トップライナー、トラックメーカー

編曲:トラックメーカー

になるのでは、と思います。コード進行や曲の構成にトラックメーカーが一役買っている率が高いからです。イメージ的に、トップライナーは作曲家、トラックメーカーは編曲家、に近いですね。これは、昨今の洋楽的な作り方に多いです。

もし、チームで0から制作した場合でも、先に作曲家がメロディ、コードを作り、編曲家がそれに合わせて、オケを作った場合は、

作曲:作曲家

編曲:編曲家

になるのでは、と思います。なんだか、ややこしいですね 笑

楽曲が採用されてから、編曲家が別の人になる場合があります。その場合は、最初に僕が書いた、

作曲:メロディ、コード進行を作った人(作曲家)

編曲:最終的に、世の中に出る作品用の、データを納品した人(編曲家)

という解釈で、いいのでは、と思います。もし、トラックメーカーが作曲に絡んでいる場合は、作曲:トップライナー、トラックメーカー になると思います。

この場合で、よく巷で誤解されていることがあるのですが、「作曲家がメロディを作っているだけ」のケースは、今現在は、ほぼありません。曲が完成して、編曲家に依頼する段階では、作曲家のデモは、かなり高いクオリティで、オーケストラも作り込まれている場合がほとんどです。たとえ、ピアノと歌、ギターと歌という、シンプルな構成のデモであっても、編成がシンプルなだけで、クオリティはかなり高いものが多いです。

もし、世に出た段階で、印象に残るリフやキメ、イントロのピアノフレーズetc…がある場合、それらは元々、作曲家がデモ段階で作ったものと同じ、というケースもよくあります。もちろん、リフなども含め、ほぼ編曲家のオリジナルのアレンジになる場合もあります。(編曲を作曲家がそのままやるか、別の方になるかは、主にクライアントさんの意向で決まります)

作曲家から渡された楽曲を、編曲家がアレンジする場合ですが、大まかにいうと、

1. 作曲家のオリジナルデモの意向を尊重して、そこから幅を広げ、精度を高めていく編曲

2. 作曲家のメロディの良さを尊重しつつ、ガラリと印象の違う曲にしてしまう編曲

に分かれると思います。1. の場合、前述したように、「作曲家の考えたフレーズをそのまま使う」箇所も出てきますが、そうすることで、その曲が一番映えるものになるのであれば、僕は全然それで構わないと思います。2. は、僕も作曲家の立場で何度か経験したことがありますが、ほんとうに「さすが!」と思ってしまいます。

作曲家が編曲までする場合と、作曲、編曲で担当が分かれる場合がありますが、

作曲家がそのまま編曲する場合は、メロディの良さをかなり生かしたものになり(作曲家にしか分からないメロディのこだわりも含め)、

編曲家が編曲する場合は、作曲家にない発想、作曲家が気付かなかったメロディの魅力を、引き出したものになることが、多いと思います。どちらにも、それぞれ違うメリットがあります。

編曲でいえば、僕はどちらかというと(というか圧倒的に)作曲家寄りの編曲家なのですが、それでも、他の作曲家さんの楽曲の編曲を、させていただくこともあります。やはり、採用された楽曲なだけあって、メロディ、コード進行、曲構成の部分では、さすがと思うことが多いです。そして、デモ段階のアレンジとはいえ、かなり方向性がしっかり定まっていたりするので、0から編曲というより、最初の時点でイマジネーションが湧きやすいです。

報酬の部分で、時々権利のことが問題になりますが(僕はありませんが)、作曲家は著作権使用料、編曲家は編曲料(MPNに加入している人なら、それプラス著作隣接権使用料)、というのが一般的です。著作権使用料は、売り上げに左右されるのでややギャンブル的ですが当たると大きく、編曲料は手堅い。本当に「隣の花は赤く見える」ものですが、これもそれぞれに良いところがあります。まあ、当たる曲を、一人で作曲・編曲できれば、一番ベストなのですが 笑

因みにですが、作曲と編曲をした場合、最後の過程でTD(トラック・ダウン)という、スタジオで行う、オケの各楽器の最終バランスを決める作業があります。その時には、「この人が、〇〇を編曲した誰々です」と紹介されます。「〇〇を作曲した誰々です」とは紹介されません。

どちらもとても大変な、大切な作業です。だからこそ、作曲する側も編曲する側も「自分の方が大変な、すごいことをしている」とは思わないで、双方をリスペクトして、アーティストを引き立たせて、リスナーを感動させる、良い & 世の中に届く作品を作ることが、大切だと思います。

___

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。必須項目には印がついています *