歌のトップノート 第1音と第4音

作曲をする時に、とても悩むのが、歌の最高音(トップノート)を、どう設定するか、ということです。
作曲家の視点からみた場合ですが、歌い手さんは、大きく分けると、3つのタイプがあると思います。
タイプ1:高い音域が得意で、高い音域が続くメロディを、地声でずっと平気で歌い続けられる人
タイプ2:中くらいの音域が得意で、でも、一瞬なら(あるいは継続的に)、高い音域を、ファルセットで綺麗に歌える人
タイプ3:全体的に音域が狭く、基本地声で歌い通す人。
この中でも、各タイプで、低い音域が得意な人(タイプA)と得意でない人(タイプB)に分かれると思うので、もう少し細かく分けると、3 × 2 = 6 タイプになると思います。
これから作る曲が、どのタイプのアーティストさんを想定したものなのか、また、プレゼンの際に歌っていただける、仮歌ボーカリストさんが、どのタイプなのか、ということも考えながら、楽曲を作っていきます。
例えば、想定アーティストがタイプ1-B なのですが、スケジュールなどの都合上、仮歌ボーカリストさんが、タイプ2-A の方になる、というケースも、実はものすごくよく出てきます。
こういう時は、僕は、双方の良い部分を考えながら、曲を書いていったり、ボーカルディレクションしていきます。なんだかんだで、曲が採用されるかされないかの段階では、デモを聴いた時の第一印象がものすごく大切なので、デモ段階では、仮歌ボーカリストさんの歌が映えるように、作っていくことも多いです。
音域が広く、中域が得意で、一瞬のファルセットがすごく魅力的なアーティストさんに、音域が狭く、トップノート付近に、サビの音が密集している曲を書くと、歌いこなせることは歌いこなせると思いますが、全体のキーをかなり低く設定してしまうことになり、その結果、持ち味のファルセットが使えなくなってしまう、こういうこともよくあると思います。なかなか難しい課題ですね。
その中でも、作曲家を悩ませるのが、タイプ1の曲を書く時、トップノートを、そのキーの完全4度(Cメジャー・キーで言えば、ファの音)にする時と、完全1度(Cメジャー・キーで言えば、ドの音)にする時です。
この二つの音の特徴は、(Cメジャー・キーの場合)その一つ下の音が、ファならミ、ドならシ、と、黒鍵を挟みません。なので、メロディを作る時、ファとミ、ドとシ、が連続して出てくるケースが多くなる、ということです。
例えば、トップノートがドで、綺麗な地声で歌えるけれど、ドとシが連続して出てくるメロディはきつい(ドとシbなら平気)、というアーティストさんの場合、結果的に半音下げて、トップノートをシにして、シとシbが連続するメロディにする、ということも出てきます。
そしたら、そのアーティストさんの持ち味が、「ド」の音の場合、その音が使えなくなってしまうのです。でも、だからといってメロディを変えてしまうと、その曲の魅力が激減してしまう、そういうことも起こり得ます。

デモ段階の仮歌ボーカリストさんとアーティストさんの持ち味のバランスを考慮すること、そして、最高音を第何音に設定するか、このあたりにいつも悩みながら、作曲家さん達は、歌もの曲作りをしていることと思います。

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