その77 年末

2006年のお話)
 
やっと有名アーティストに楽曲を提供でき、シングルA面、オリコントップ10入りも果たし、その年のiTunes Storeの年間ダウンロードでも、10位にランクインすることができた。そして、日本を代表する歌姫にも楽曲提供して、初のアレンジも含めた仕事では、デビュー曲でのシングルA面を担当。(この曲は、当時の外国人アーティストの日本デビュー曲として、初のオリコントップ10入りを果たした) その他にも多数有名アーティストに楽曲提供・・・
 
2006年は、本当に今までが嘘のようなくらい、様々な作品に携わることができた。自分の努力もあるけれど、やはり、自分の可能性を信じて営業していただいた、スタッフの方々のおかげだと思った。また、一瞬「あれっ?」て思うことがあっても、結果的にもっと良い方向に行くことの多い、なぜか運の良かった一年だった。
 
キャリアの最初を考えたら、本当に信じられなかった。一応、なんとかプロの作曲家、と名乗ってもいいのでは、と思うところまで、周囲の方々のおかげで引き上げられた。しかし、油断は禁物、たかが一年だ。ラッキーでなんとかなったことがたくさんあったことを忘れず、まだまだある課題を一つ一つクリアしていくことを、怠らないようにしよう、と思った。
 
そして、年末が迫ってくると、気になるのは、有線大賞、レコード大賞、そして、紅白歌合戦である。
 
当時、BoAさんは、レコ大、紅白の常連だった。そして、BoAさんの曲で、この年、特にヒットしたのが、「Winter Love」と「七色の明日 ~ brand new beat ~」だった。
 
「どちらかで歌っていただければ…」
 
あまり高望みは良くないと思いつつ、これらの賞は、なかなか取れるものではない。ある意味、オリコン1位よりも難しい。ほんのちょっとだけ、楽しみにすることにした。
 
先に、レコード大賞の金賞の受賞曲として、「Winter Love」が発表された。「Winter Love」は冬のバラード、まさに年末の季節にふさわしい楽曲で、BoAさんの歌唱力がふんだんに生かされた名曲だった。セールスも素晴らしかった。
 
「やっぱりそうだな。きっと紅白も『Winter Love』だろう。でも、今年はすごく頑張って、今までできなかったことが、やっと実現できた。それだけで、もう十分じゃないか。」
 
正直、悔しいとか、残念という感情は全くなかった。そういうことを楽しみにできる場所にいるだけでも、すごいことだと思っていた。そこにいる人達は、みんな雲の上のような、クリエイターさんばかりだった。
 
一過性なものにせずに、これをずっと継続できるよう、頑張っていこう。こういう業界だから、もし一時的に調子が悪くなったとしても、焦らずに改善策を考え、今できること最善のことをしっかりやっていこう。。。
 
数日後、「ボディスーツ騒動」で語り継がれている、2006年の第57回紅白歌合戦の、出場歌手の歌う曲目が正式に発表された。
 
BoAさんの歌唱曲は、「七色の明日 ~ brand new beat ~」だった。
 
 
(終わり)

 

 

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