(2006年のお話)
さて、、、この時点で僕はまだ、音楽業界の仕事で、アレンジまで担当したことがなかった。BGMだったり、社歌だったり、というのは普通にあったが、いわゆる、メジャー・アーティストが歌う、CDに収録される楽曲で、というのは、まだ一度もない。
全く興味がないわけでも、そこを全く目指していないわけでもない。実際、アーティストにプレゼンする際には、かなり作り込んだアレンジをしていた。ただ、まだ僕にとって、本テイクの編曲というのは、敷居の高い仕事だと感じていた。当時の自分が使用していたMacのスペック的にも、あまり自信がなかったかもしれない。
しかし、それをやってこそ、一人前だ、という思いは強かった。所属していた事務所の社長(現役バリバリの超一流クリエイター)にも、ゆくゆくはアレンジの仕事も含めて取れるように、とよく言われていた。
著名なアーティストに楽曲も提供できるようになり、採用率もどんどん上がってきている中、編曲に関してはまだちょっと先なのかな、と感じていたのだが、、、ついにある日、そちらも含めた仕事のお話をいただいた。
ある外国人女性アーティスト、、、インター・ネットでグラビアが話題になり、そこから人気に火が付き、日本で歌手デビューすることになった方の仕事だった。僕は、デビュー・シングルのカップリングの作曲、編曲を担当することになる、という。温かく優しい雰囲気の、J-R&Bバラードだった。
その時点で、僕はその方のことを、ほとんど知らなかった。グラビアを見ると、確かに日本で人気の出そうな可愛さで、少々過激でもある。しかし、資料を見ながら、どことなく不器用だけれど、とにかく一生懸命頑張っている、普通の女の子、という雰囲気が伝わってきて、「自分にちょっと似ているかも」と思った。
人間、似たような境遇、考えの人が、近くに集まる、とよく言われるが、そうなのかもしれない。この子はデビュー作で、自分もアレンジは今回初めてだ。不安もあるが、なんとか良い作品にして世に出したい、そう思った。
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