(2006年のお話)
浜崎あゆみさんに、「1LOVE」を楽曲提供すると決まった時、信じられない嬉しい気持ちと、ある種の不安があった。
気にしなければいいのだが(本当に馬鹿なのだが 笑)、やはりネットでの評判というか、曲に対してどのように思われるのか、すごく怖かった。BoAさんの時と違い、この曲は苛立ちや怒りや投げやりな感情を、そのままメロディにした曲だ。確かに、カッコいい作品になった、という自負はあったが、例の、同じ音程をひたすら8分音符で連続させる、サビのメロディが、果たして受け入れられるのか、、、ひじょうに贅沢な悩みなのだが、実際にリリースされると決まると、やはり気になってしまった。
リリースの報告があって間も無く、パナソニックのCMのタイアップで、「1LOVE」はどんどん放送された。僕が書いた時は、ブルースフィーリングの強いロックだったが、完成されたアレンジは、同じロックでも、かなりハードなものに変わっていた。
おそるおそる、掲示板をのぞいてみると、結果的に、、、「1LOVE」は、多くのファンの方に、大絶賛されている、そういう印象を受けた。もちろん、それなりに好き嫌いはあったと思うが、比率は9:1くらいだ。本当に分からないものだ。好評の理由はおそらく、歌詞による部分が大きかったのだろう。
浜崎あゆみさんは、当時の僕には、存在の大きさ的にも、音楽スタイル的にも、あまりにも遠い存在すぎて、この方に楽曲提供できることは、ほとんど想像できなかったのだが、そこを100%狙わないで作ったのが却って、良い意味でアーティストカラーを広げるということで評価され、採用されたのかもしれない。本当にラッキーだった。何しろこの頃は、如何にR&Bテイストの強い楽曲を、他の作曲家さんと被らない、自分の個性で作るか、ということばかり考えていたのだから。
一つ言えることは、「ロック」という部分で楽曲を決められたのは、、学生時代に嫌という程、ハード・ロックやヘヴィ・メタル、ロック全般が流れている環境にいた、そのおかげで、ロックの要素が、自然に身体の中に染み込んでいたからだと思う。(余談だが、僕の大好きな、David Benoitさんは、ロックスピリットでジャズを弾いている方だと、個人的には思っている)
「1LOVE」が収録されたアルバム「Secret」がリリースされた後、大学時代のサークルの部室に一度寄ってみた。中に入る勇気はなかったが、学生の練習している音が外に漏れてきた。昔と変わらない質感の音だった。
「この場所のおかげだ、ありがとう・・・」
そう思って、部室を後にした。