その14 作曲

学生時代は、演奏が上手になりたいとか、カッコいい即興演奏ができるようになりたいとか、そういう方面ばかり意識していて、作曲はそこまで関心がなかった。年に何回か作ったりして、曲自体はそれなりになるのだけれど、大量生産はできない。あまり得意だとか、向いているなと感じたことがなかった。高校生の時も、ビーイング系の歌ものを一度作ろうとして、挫折した記憶もある。

学生最後の年に、オリジナルバンドを組んで、その時にライブでできる位の数の曲を作らざるを得なくなった。その時も、あまり得意な意識のないまま、何曲か作っていたのだが、ある日、

部室に行く30分前に、15分で1コーラス、残りの15分でフルサイズの構成を作ったことがあった。自分なりになかなか悪くない、八神純子さんの「みずいろの雨」を、コンテンポラリー・ジャズっぽくしたような曲だった。その時初めて「自分、作曲できるのかも」と思った。

これもおそらく、しばらくジャズピアノを習ったおかげだと思う。ジャズ自体はすぐには上達しなかったが、なぜか、聴音の能力が格段に上がり、作曲のコツのようなものが以前より分かっていた。

苦手意識がちょっと消えて、今度は、ゴスペルみたいな曲を書いてみようと思った。映画「天使にラブソングを」をビデオレンタルして観て、触発されたのだ。レンタルだから、返さなければならず、サントラは記憶の中にしかない。あとは自分のイメージだ。

卒業前の最後のライブで披露し、「ああ、これで終わった〜」と思った。それから、一度もこの曲を演奏したことはなかった。

それから10年以上経過し、あるデビュー前の女性ボーカルグループの曲制作の案件があった。卒業前のライブでやった曲のイメージが浮かんだ。元のままではかなり未熟なので、そこから新たなメロディをつけたり、細部を直したり、アーティストのイメージに合わせてプレゼンした。

しばらくして、楽曲が採用、との報告を受けた。そのアーティストのHPを見たら、なんと、自然の多い公園の中で、歌のすごく上手な、6人の若い可愛い女の子達が、全てアカペラで歌っている!

今まででリリースした楽曲の中で、最もびっくりした瞬間の一つだった。曲のアイデアはいつも作っておくべきだと思った。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。必須項目には印がついています *