その10 「コーダル(Chordal)」「モーダル(Modal)」

JAZZを習うようになった時、「コーダル(Chordal)」と「モーダル(Modal)」という言葉があることを知った。
 
 
一般的によく巷で耳にするポップスは、「コーダル」なものが多く、 たとえば、C – Am – F – G とか、F – G – Em – Am みたいな、コード進行があって、どんどん展開しているタイプの音楽だ。ジャズのスタンダードの場合、「Autumn Leaves(枯葉)」「Misty」「My One And Only Loveetc… のような曲は、「コーダル」な曲だ。
 
 
「モーダル」というのは、なかなか説明が難しいのだが、簡単に言うと、通常の曲のように、メジャー・スケールや3つのマイナー・スケール(ナチュラル、メロディック、ハーモニック)ではない、特殊なスケールの中で基本的に展開していく音楽だ。
 
コード進行も「コーダル」のように、どんどん展開していく、というより、1発コード、2発コード、といった、ひじょうにシンプルな循環コードを繰り返していくタイプが多い。
 
なので、展開をガラリと変えたい時は、同じ循環コードのパターンを使って、ごっそり転調したり、別の循環コードのパターンを用意して、新たな展開を作っていくことが多い。
 
Aメロは「モーダル」で、Bメロ、Cメロが「コーダル」なタイプの曲、というものも勿論ある。
 
 
ドレミファソラシドを、各音から順番に並べた場合、それぞれのスケールは、
 
ドから始めたスケール :C イオニアン・スケール(メジャー・スケール)
レから始めたスケール :D ドリアン・スケール
ミから始めたスケール :E フリジアン・スケール
ファから始めたスケール:F リディアン・スケール
ソから始めたスケール :G ミクソリディアン・スケール
ラから始めたスケール :A エオリアン・スケール(ナチュラル・マイナー・スケール)
シから始めたスケール :B ロクリアン・スケール
 
となる。イオニアン、エオリアンは普段からもよく使用するが、普通のメジャー、マイナー・スケールではなく、これらのスケールの中で展開していくのが、「モーダル」な音楽の特徴だ。
 
たとえば、「Dドリアン・モードの曲」の場合、「Dドリアン・スケール」を使う。
 
Dメジャー・スケールは      「レ ファ#     # レ」
Dナチュラル・マイナー・スケールは「レ ファ     b   レ」、そして
Dドリアン・スケールは      「レ ファ          レ」
 
だ。
 
ドリアン・スケールは、3番目の音が短3度になるので、マイナー系のスケールになる。(つまりドリアン・モードの曲は、マイナー系の曲だ)
 
そして、ドリアン・スケールは、ナチュラル・マイナー・スケールと違い、第6音が長6度だ。(Dドリアンなら 「シ」) なので、この第6音が、ドリアンモードの「特性音」となるので、「Dドリアン・モードの曲」なら、「シ」の音を効果的に使っていけば良い、ということだ。
 
 
たとえば、雰囲気のあるドラムループをバックに、左手でコードをDm7をずっと押さえながら(「レ」を一番下に置いて)、右手で、Dドリアンスケールの中にある音を、6番目の「シ」の音をちょっと意識しながら、好きなように並べていくと、多分、なんとなくそれなりに形になると思う。もちろん、本気でやったらものすごく奥が深い。
 
 
完全に〇〇モードだけで構成されている曲もあって、有名なものでは、マイルス・デイビスの「SO WHAT」などは、「Dドリアン・モードの曲」だ。譜面を見ても、通常の楽譜のように、コードの場所に「Dm7」なんて書かれておらず、D doriEb dori、と表記される。
 

 
 
(但し調号の表記は、Dナチュラル・マイナー・スケールの曲同様、ちゃんと「シ」の場所にb が書いてある。モードの曲だからといって、調号が「シ」がナチュラルになる、ということはない。よく混同されるが、モードと調とスケール は似ていて微妙に違う。)
 
 
この「モーダル」「モード」の概念を知っておくと、ひじょうに幅が広がる。ポップスの場合、完全に「〇〇モードの曲」というのはそれほど存在しないが、Aメロ、Bメロetc…パーツ単位で、モードの概念が使われている楽曲は非常に多い。特に、ドリアン、フリジアン、リディアンは、なんとなくでも使えると強い。
 

 

(ここでは、アヴァイラブル・ノート・スケールと共通するスケールが多数出てきますが、やっていることは全く別ものです)
 

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