● JASRACについて
私は、JASRACと信託契約を結んでいますので、私の作る楽曲は全てJASRACの管理となっております。なので、もし私に楽曲制作を依頼してくださる場合、楽曲使用の用途によっては、必要あればその都度JASRACに申請していただく必要があります。(その場合、依頼者さまは、作曲依頼料金の他に、著作権使用料、いわゆる印税 もJASRACに支払う必要が出てきます)
ただし、巷でのイメージとは違い、依頼者さまがJASRACへの申請が必要になるケース(著作権使用料を支払わなければならないケース)というのは、実はそれほどありません。また、たとえJASRACへ申請をした場合でも、依頼者さまが支払う著作権使用料は、多くのケースにおいては軽い負担で済むようになっております。
※以下、背景がピンクは申請が不必要なケース、背景が薄緑色は申請が必要なケース、背景が水色は判断に迷った時のケースになっています。
● JASRACへの申請が不要なケース
① JASRACへの申請手続きが不要か必要かの判断は、著作権法38条1項の条文が重要になってきます。
著作権法38条1項
著作権法38条では、既に公表された著作物は、営利を目的とせず、且つ、聴衆又は観衆から料金を受けない場合には、上演、演奏、上映、口述することが許される。 ただし、実演家や口述を行う者に報酬が支払われる場合は許されない。
つまり、次の(1)~(3)の条件を全て満たしている場合は、申請が不要になります!
(1)営利を目的としない
(2)聴衆又は観衆から料金(いずれの名義をもってするかを問わず、著作物の提供又は提示に付き受ける対価)を受けない
(3)実演家に報酬が支払われない
② 曲を使いたいサービスそのものが、JASRACと利用許諾契約(包括契約)を締結している場合も、JASRACへの手続きは不要です!(これがすごく大きいです!)
https://www.jasrac.or.jp/news/20/ugc.html
配信(動画投稿サービス)についてのJASRACの声明
https://www.jasrac.or.jp/news/20/interactive.html
YouTube、インスタグラム、TikTok、ニコニコ動画 etc… で楽曲を使用する際は申請の必要はないので、楽曲の依頼者さまが著作権使用料をJASRACに払う必要はありません。
● JASRACへの申請が必要なケース
① 次の(1)~(3)の条件を一つでも満たしている場合は、申請が必要になります。(料金に加え、著作権使用料をJASRACに支払う必要があります)
(1)営利を目的とする
(2)聴衆又は観衆から料金(いずれの名義をもってするかを問わず、著作物の提供又は提示に付き受ける対価)を受け取る
(3)実演家に報酬が支払われる
② 曲を使いたいサービスそのものが、JASRACと利用許諾契約(包括契約)を締結していない場合は、JASRACへの申請手続きが必要になります。
https://www.jasrac.or.jp/news/20/ugc.html
上記のサービスに書かれていないもの(現時点では X 旧ツイッター など)で楽曲を使用する場合は、申請が必要となります。
ポピュラーな事例としては、
・自分自身がコンサートを主催して、そこで楽曲を演奏する。
・販売目的でCDを自分で制作する。
・販売目的で楽譜を制作する。
のいずれかの場合は申請が必要で、依頼者さまがJASRACに著作権使用料を支払う必要があります。
● JASRACヘの申請方法
申請は必要なタイミングでその都度行います。(楽曲を依頼したからといって、すぐにする必要はありません)
JASRACのメールフォーム
https://www.jasrac.or.jp/news/20/200410.html
もしくは
JASRACのTEL:03-3481-2121(代表)
から申請してください。(申請が必要かどうかなどあやふやな場合 etc, ここからお問合せしてもいいかと思います)
● こういう場合は、JASRACへの申請が必要か?? (確かな場所で確認済みです)
◎ ex.1 校歌、社歌を卒業式などでピアノ伴奏で歌う。
↓
申請は不要!
校歌や社歌などの場合は、38条1項以前に、JASRACと信託契約をしている作曲家が作品届けの際に、そのような用途で使用される旨の記述をすれば、JASRACの管理が制限される。歌うのみや流すのみであれば申請は不要。歌う際にピアニストに伴奏を頼み、ギャラが発生したとしても申請は不要。但し、記念のCDにして販売するなどの場合は必要になります。この場合は、CDを会場などで売ったことに対してではなく、販売目的でCDを制作したことに対しての申請となります。
◎ ex.2 会社内のイベントのテーマソング
↓
申請は不要!
校歌、社歌の場合と同じような扱いになるので、JASRACと信託契約をしている作曲家が、その旨を作品届けに記述すれば良い。
◎ ex.3 お祭りで、盆踊りの曲を流す。
↓
申請は不要!
38条1項に書かれている、申請の必要がない要件を全て満たしているので、申請は要りません。
(屋台で食事が売られているとかは、メインの目的にはならないので、申請には関係ありません。)
※但し下記のケースは申請必要
盆踊りで、ダンサー、バンド etc,,, が演奏して、実演家にギャラが入る場合は申請は必要になります。
実演家ですが、編曲家はJASRAC的には実演家にはなりません。あくまで演奏行為、パフォーマンスをしているかに着目されます。(ダンサーは音を出していなくても実演家です)
MCも、曲以外の扱いになるので、もしMCにギャラが発生しても、実演家の対象外となります。
◎ ex.4 結婚式で曲を流す
↓
申請は不必要(依頼者が式場を利用する側の場合)
申請は必要 (依頼者が式場関係者の場合)
結婚式場という、音楽を使う施設が営利目的であるため。この場合は式場が手続きをします。実際に楽曲を使用する人は申請は必要ありません。(なので依頼者さまが結婚する立場の場合、著作権使用料を支払う必要はありません) YouTube などの包括契約と同じように考えます。
◎ ex.5 プロ野球の野球場で使用される入場テーマ(ラッキーセブンに球場全体に流れる曲 etc…)
↓
申請は必要(依頼者が試合の主催者の場合)
これも、YouTube などの包括契約と同じように考えます。営利目的で試合を主催するので、この場合は、球場や球団側が、JASRACと手続きをします。
◎ ex.6 プロ野球のヒッティングマーチ(トランペット応援など)
↓
申請は不要!(依頼者が応援団の場合)
応援団は試合の主催者ではないので、38条1項に書かれている、申請の必要がない要件を全て満たしているので、申請は要りません。もしメジャーCDになっている楽曲が使われていたとしても、申請は必要ありません。応援団のトランペット隊にギャラが払われている場合でも、応援団は主催者ではないので、申請の必要はありません。
◎ ex.7 路上ライブ、ストリートピアノで楽曲を演奏する場合
↓
申請は不要!
38条1項に書かれている、申請の必要がない要件を全て満たしているので、申請は要りません。
もし、出版社を通してリリースされた、メジャー楽曲を演奏する場合でも、申請は要りません。
但し、CDを作ってその場で販売などする場合は必要になります。その場合ですが、その場で売る行為に対しての申請が必要なのではなく、販売目的でCDを制作する行為に対しての申請が必要となります。
◎ ex.8 自分が主催者ではないライブで楽曲を演奏する場合
↓
申請は不要!
自分がライブの主催者ではないので、申請は要りません。(ex.7 と同じような感じ)
※申請手続きは、いくつかの種類に分かれており、主催者であること、制作したこと、演奏したこと etc… それぞれ別個に手続きが必要か否かを考えていきます。(複数の申請を同時にしなければならないケースもあります)
● 申請が必要か不必要か、どうしても分からないケースは?
私が分かりそうなケースはここまで書いてきた程度です。申請が必要なケースとそうでないケースは、本当にさまざまな場面が想定されますので、もし分からないことがあれば、JASRACさんに直接聞くのが一番間違いないでしょう。
JASRACのメールフォーム
https://www.jasrac.or.jp/news/20/200410.html
JASRACのTEL:03-3481-2121(代表)
● JASRACへの申請が必要な場合、使用料はどれくらいになるのか?
依頼者さまが支払う著作権使用料は、大方のケースにおいて、比較的軽い負担で済むのではと思います。
https://www.jasrac.or.jp/info/index.html
気になる方は、上記リンクの、「お手続き診断 / 使用料計算シミュレーション」 で概算を計算してみてください。
● まとめ
長々書きましたが、JASRACと信託契約をしている作曲家に曲提供を依頼する場合、
①:
◎ YouTube、インスタグラム、TikTok、ニコニコ動画 etc… X 旧ツイッターを除いたほとんどの 配信(動画投稿サービス)、自分が主催者ではないライブで歌う、路上ライブ、競技場での応援、校歌、社歌、盆踊り、結婚式(式場を利用する側の場合) etc… は手続き不要。(著作権使用料をJASRACに支払わなくて大丈夫)
◎ X 旧ツイッター、レストランのBGM、結婚式(式場側)、スポーツイベントの入場テーマ(主催者)、自分が主催したライブで歌う、私が提供した曲の入ったCDを販売目的で自主制作する etc… の場合は、手続き必要。(著作権使用料をJASRACに支払う必要がある)
②:
著作権法38条1項
(1)営利を目的としない
(2)聴衆又は観衆から料金(いずれの名義をもってするかを問わず、著作物の提供又は提示に付き受ける対価)を受けない
(3)実演家に報酬が支払われない
の全てを満たしていれば、JASRACへの申請は不要、JASRACに著作権使用料を支払わなくて大丈夫。
別の言い方をすれば、
・自分自身がコンサートを主催して、そこで楽曲を演奏する。
・販売目的でCDを自分で制作する。
・販売目的で楽譜を制作する
のいずれかに当てはまる場合は、JASRACに申請をしてJASRACに著作権使用料を支払う必要がある。
③:
校歌や社歌などの場合は、作曲家側が作品届けを出す際、そのような用途で使用される旨の記述をすれば、JASRACの管理が制限されるので、JASRACへの申請は不要、JASRACに著作権使用料を支払わなくて大丈夫。
④:
もし著作権使用料が発生する場合でも、それほど高くならないケースが多い。
お手続き診断 / 使用料計算シミュレーション
https://www.jasrac.or.jp/info/index.html
⑤:
判別がむずかしい場合は、JASRACに直接質問するのが間違いない。← これが一番確実です!
JASRACのメールフォーム
https://www.jasrac.or.jp/news/20/200410.html
JASRACのTEL:03-3481-2121(代表)
という感じです。意外と多くの場合、クライアントはJASRACに著作権使用料を払わなくて(手続きをしなくて)大丈夫になります。
● 最後に
クライアントが楽曲を依頼する時、イメージ的な部分で(手続きが面倒なのではないかetc…)、どうしてもJASRACメンバーの作曲家にお願いすることに躊躇するケースが現時点ではまだまだ多いと思いますが、
JASRACメンバーの作曲家の時も、意外と普通の作曲家に依頼する時と同じ感覚で大丈夫だと思います。
もし今、作曲家に何か楽曲を依頼したいと思われている方、この記事を読まれて少し考え方が変わるようなことがあれば、幸いかと思います。
p.s もし私に作曲を依頼したいと思われる、有り難い方がいらっしゃれば、お気軽にお問合せください。
私のHPの投稿フォームから : https://brandnewtale.tumblr.com/CONTACT
X 旧ツイッターのDM(メッセージ)から: https://twitter.com/srsrdrmn
下の記事に主な音楽サービスの内容を書きました。
作曲、レクチャーetc…音楽における各種サービスやります!(2024年3月現在)
p.s
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