久々に、CHAGE and ASKA さんの音楽の話をしたいと思います!
CHAGE and ASKA さんの音楽性の特徴として、一般的には語り尽くされている感があるかも知れませんが、「ルーツがない、あるかも知れないけれど、あまり読めない」という点があると思います。
お二人とも、すごく研究熱心な方だと思うので、「ルーツがない」ということは、おそらくない、と思うのですが、多分、それを感じさせないくらい、オリジナリティが強い、ということなのでしょう。
僕は個人的には、チャゲアスは「ルーツから派生させて自分の音楽を作る」のではなく、「自分たちの音楽に、ルーツを取り込んでいく」タイプのアーティストではないかと思っています。
それで、ポップスを作る手法として、僕はいくつかのスタイルがあると思うのですが、大まかにいうと、
(タイプ1)
楽曲のメロディ、コード、構成そのものに、ルーツ感を反映させるタイプ
(タイプ2)
メロディやコードなど、楽曲の骨格を作る時は、ルーツをあまり考えずに、自分の感性を重視して作り、アレンジでルーツ感を入れていくタイプ
(タイプ3)
1と2どちらでもないタイプ、つまり楽曲の骨格的にも、アレンジ的にも、ルーツ感はあまり重要視しないタイプ
の3タイプに分かれると思います。(このカテゴライズは僕が勝手に考えたものなので、参考程度に 笑)
僕は、CHAGE and ASKA さんは、基本的には、タイプ2 なのじゃないかなあ、と思っているのですが(CHAGE さんは、タイプ1の比重も少し多いのかな)、いずれにせよ、タイプ3 以外の場合は、楽曲を聴けば何かしら、「元ネタ」になっている楽曲やサウンドは、なんとなく分かったりするものです。(これは、パクリとかいうものとは、全く違う次元の話です)
そう考えた時、ずっとある曲が、気になっているのです。
1992年にリリースされた、15枚目のオリジナル・アルバム「GUYS」に収録されている、同名のリード曲、「GUYS」です。作詞・作曲ともに、ASKA(飛鳥涼)さんです。
この曲を初めて聴いた時、FMラジオだったのですが、「なんて疾走感に溢れて、カッコいいのだろう!」というのと同時に、「今まで全く聴いたことのない、なんて表現したら良いのか分からない音楽だ」と、衝撃を受けたのを覚えています。
この「GUYS」という曲は、曲調を聴いた感じ、いわゆる「歌謡曲的」な要素はほとんどなく、またロンドンでレコーディングされたということも相まって、頭から終わりまで、非常に「洋楽的」な雰囲気が漂っています。
なのでこの曲は、タイプ1の「楽曲のメロディ、コード、構成そのものに、ルーツ感を反映させるタイプ」に入りそうな雰囲気の楽曲なのですが、
メロディやコード進行的にも、サウンド的にも、元ネタだったり、味付けにしているものが、一体どういう音楽なのか、全く分からないのです。ただ単に、僕の勉強不足なだけなのかもしれませんが、他の楽曲は何となく分かったりします。微かに分かるのは、イントロや間奏に入るギター・リフが、英国風であるかな、ということくらいなのですが、この曲が影響を受けたであろうサウンドや、メロディが入っている曲、もしくはジャンルって、洋楽邦楽問わず、あるのでしょうか?
そういう意味では、タイプ3 の楽曲とも言えるのですが、聴いた感じは、完全にタイプ1 、楽曲の骨格そのものからサウンドまで、ジャンル感を感じて聴こえる、僕にとっては、とても不思議な曲です。
また、サビのメロディ、コード進行も、すごいです。最初の4小節を、Cメジャー・キーに直して考えると(実際はAメジャー・キー)、
Call me | guys always | 周り | つづける | ~
Gsus4/C – Gsus4 | Gsus4/A – Gsus/E | Gsus4/F – Gsus/D | Gsus4/A – Gsus4/C | ~
となるのですが(これも正直、合っているか自信ないくらい、音取りが難しいです)、
1小節目の、歌詞の「me」にあたるメロディは、ラ(A音)になるので、コードのルート音は、慣習的に考えれば、メロディと同じラ(A音)に行きたくなるのですが、ここはソ(G音)に来ており、そのおかげで、2小節目の最初のコード、ルート音がラ(A音)の Gsus4/A に、疾走感を止めずに、非常にスムーズに繋ぐことができます。
全て分数コード、しかもルートが1度のコードでさえ、分子(和音の部分)は 5度のsus4(!) になっているので、その部分を分かりやすく、簡略化してしまえば、おそらく
C – C/G | Am – C/E | F – Dm7 | Am – C | ~
が、原型なのかな(ちょっとカノン進行っぽいですね)、と思いますが、和音で Gsus4がずっと鳴っていることで、楽曲全体に漂う、浮遊感を感じます。
サビにこのようなコード進行を持ってくる楽曲は、すごく珍しい気がします。でも、この曲も例に漏れず、非常にキャッチーで、そんなに小難しく考えなくても、聴いた人が楽しめる楽曲になっています。
「CHAGE and ASKA は、チャゲアス自体がルーツなんだ!」と、時々思うこともあるのですが、もしかしたら、この「GUYS」という楽曲は、それを最も端的に表現した楽曲であり、また、アレンジャーさんや演奏に関わっているプレイヤーの方々も、完全に一体となって生まれた、唯一無二の個性を持つ楽曲、と言えるのかもしれません。歌メロ部分は勿論そうなのですが、イントロも間奏もアウトロも、この曲はひじょうに個性的です。アレンジャーさんもプレイヤーの方々も、そしてエンジニアさんも、かなり大変だったのではないでしょうか?
「もし」があれば、こういうタイプの楽曲に、何かしらのジャンル名が付いて、後世にフォロワー(ネットのフォロワーではありません 笑)になったアーティストが、なにかしら発展させた形で発表する、という流れがあっても、おかしくはなかった、と思うのですが、
(おそらく)今のところ、そうなっていないのは、あまりにも本家のオリジナリティ、クオリティが凄すぎて、影響を受けていても、それを反映させて、聴き応えのある商業作品として成立させるまでには至らないからではないか、と、個人的には思っております。もし僕が、「『GUYS』みたいな雰囲気の曲を作ってください!」言われたら、「ごめんなさい、絶対できません」と断ってしまいそうな気がします。
ちなみに、この曲が収録されている、同名のアルバム「GUYS」は、140万枚以上のセールスを記録し、「no no darlin’」「野いちごがゆれるように」「世界にMerry X’mas」etc… 今でもチャゲアスの代表曲となっている楽曲が多数収録されている、素晴らしいアルバムです。興味のある方は、ぜひ聴いたり、収録されている楽曲のライブ映像を観てみていただければ、と思います!