NiziU さんデビュー・シングル『Step and a step』の、話題のメロディ、コード進行(改訂版)

日本人の女の子9人で構成された、K-POP アイドルグループ「NiziU」。(ニジューと読みます。)

NiziU さんの、デビュー・シングル「Step and a step」が、12/2にリリースされました!

MVも配信されておりますが、ものすごい再生回数ですね!

デビューを飾るにぴったりな、軽やかで明るい、前向きな友情ソングで、これからの活躍がひじょうに楽しみなアーティストです! 作詞・作曲は、プロデューサーでもある、J.Y.Park(パク・ジニョン) さんです。作詞は、Yui Kimuraさん(木村友威さん)との共作です。

この、「Step and a step」ですが、ここ最近、なにやらクリエイターの間で、ちょっとした論議がなされており、話題になっておりました。どうやら、Aメロの一部が、メロディとコードが合っていないんじゃないか、音楽理論的に見て、アウトなんじゃないか、いやいや、カッコよければ良いのでは etc… です。

問題の箇所は、上記のMVの、15secあたりと、22secあたりになります。小節数で言えば、3・4小節目と、7小節目です。そこのメロディで使われている、ファ(F音)が、問題になっているようです。

僕はこの箇所に関して、個人的にごく僅かな人にだけお話しておりましたが、野暮かなと思ったので、公には書かないつもりでした。しかし、僕と同じ解釈の方が、あまりいないみたいでしたので、今更なのですが、このブログの方で、思っていることを、少し書きたいと思います。閲覧者を増やしたいから?? それも少しあるかも、です 笑

この部分、音楽理論的にも、僕はOKだと思います! 但し、僕の耳コピしたコードが合っていれば、です。 笑

この曲のキーは、Gメジャー(平行調はEマイナー)です。Aメロのコード進行を見ていきますと、

C – Dsus4 | Em – Em / G | C – Dsus4 | Em |

C – Dsus4 | Em – Em / G | C – Dsus4 | Em |

となります。(16分音符食ってるのは省略) そして、太字にした箇所に、メロディに、ファ(F音)が入ってきます。Gメジャー・キーは、第7音が、ファ#(F#音)になるので、ここがどうなのか、ということです。

ちなみに、歌が入る前の、イントロ箇所では、メロディはファ#(F#音)を含んでおります。ここは普通に、誰にでも違和感なく聴こえるでしょう。

いつもなら、「Cメジャー・キー」に置き換えて説明するのですが、今回は、オリジナル・キーのまま説明します。

僕は、この問題箇所(?)は、平行調である、Eマイナー・キーに転調している、と考えます。通常の楽曲では、そのままGメジャー・キーで考えてしまうことが多いのですが、なぜそうするかというと、この部分は瞬間的に、

Eフリジアン・モードの楽曲になっている

と解釈しているからです。本当なら「Gメジャー・キーから、Eフリジアン・モードに転調している」と言いたいところなのですが、〇〇モードは、調号としてはマイナー・キーとして扱っていくので、それが言えないので、上記のような表現をさせていただいています。(と書きましたが、もし、この認識間違っておりましたら、また教えてください)

Eフリジアン・モードは、ミの音を第1音として考えて、全て白鍵盤で構成されているスケール、Eフリジアン・スケールを使います。つまり、「ミ・ファ・ソ・ラ・シ・ド・レ」で成り立っているスケールを使います。

一方、Eナチュラル・マイナー・スケールは、「ミ・ファ#・ソ・ラ・シ・ド・レ」で成り立っています。因みにナチュラル・マイナー・スケールは、モード的解釈では「エオリアン・スケール」とも言います。

この2つのスケールを比べてみると、3番目の音は、どちらもソで、度数で言えば短3度、つまり、マイナー・キーであることを特徴づける音になっています。

そして、2番目の音は、Eナチュラル・マイナー・スケールの方は、ファ#(F#音、度数なら長2度)ですが、フリジアン・スケールでは、ファ(F音、度数なら短2度)となります。この2番目の音が、フリジアン・モードを特徴づける、美味しい音であり、「特性音」と呼ばれます。これはまさに、「Step and a step」で論争されている音です。

そして、、「Step and a step」のAメロのコード進行をよく聴いてみると、1・3・5・7小節目に、通常なら使いそうな、Dメジャー・コード(レ・ファ#・ラ)は使われておらず、代わりにDsus4(レ・ソ・ラ) が使われています。ここから、Aメロの話題になっている箇所のコード進行を、細かく見ていきましょう!

3小節目の Dsus4

問題箇所といわれる3小節目を見てみると、DメジャーではなくDsus4にしたのは、おそらく、Dsus4 部分のメロディが「ソファ」と来ており、Gメジャー・キーのドミナントである、Dメジャー・コードのアボイド・ノートはソ(G音)になるので、それを避けるためだと思われます。そしてこの時、メロディにファ(F音)を使用することも可能です。結果的に、コードの構成音にはファ#(F#音)が含まれず、メロディにファ(F音)が入ってくるので、Eフリジアンの色が強くなります。Dsus4は、3小節目4拍目のメロディを構成しているソとファの2音を、使っているスケール的にも、コードとの関連性においても、スムーズにするためのものであり、理に適っている、といえます。他の1・5・7小節目も、メロディにソ(G音)が多用されているので、統一感も手伝い、Dsus4は相ふさわしいコードだと思います。特に7小節目は、3小節目と全く同じ理由であると言えるでしょう。

(この箇所のメロディが、もし「ソファ」でなくて、「ラソ」だったら、、その次の小節はこんなに論争になっていなかったのかもしれません。それくらい斬新なメロディの動かし方です。)

4小節目の Em と N.C.

Aメロ4小節目のEm のコードの時の、メロディのファ(F音)も、フリジアン・モードなら特性音になるので、むしろ美味しい音として使えます。そして実は、1拍目のEm が鳴っている部分は、歌メロはお休みです。そして、2拍目から歌メロがファ(F音)で入ってくるわけですが、ここからは逆にコード楽器はお休みになり(つまりノン・コード = N.C. になり)、小節の頭から鳴り続けている、シンセ音のシ(B音)のみになります。

歌メロのファ(F音)とシンセ音のシ(B音)は、コードがG7の時の「トライトーン」の関係になるので、不安感を出しつつ、次のコードのCメジャーに行きたくなるという意味でも有効です。なので、一瞬とてもハッとする箇所ですが、理に適っており、そこまで違和感のあるものではないかな、と思います。1コーラス目に限っていえば、この箇所はモードの概念の有無に関わらず、メロディもコードも、音は全くぶつかっていません。

この2拍目からのN.C の箇所に、もしコードを付けるとすれば、G7(13)がぴったり合うでしょう。というか、2コーラス目では、この箇所に(厳密には2拍目半から)、Em / G を持ってきています。Em / G は、G7(13) の5thと7thを弾いていないコードです。G7(13)は、5thを省略することが可能であり、7thにあたるファ(F音)は、歌メロに含まれているので、、Em / G はこの箇所にとても相応しいコードと言えます。やはりJ.Y.Parkさん、よく考えてらっしゃいます。「2コーラス目の同じ箇所が違和感なく聴こえる」という人が多いのは、ここに Em / G というコードが入ってきているのが理由でしょう。4小節目は、クリエイターさんの間で、最も論争になった箇所ですが、実は一番、合理的な箇所なのかもしれません。

7小節目の Cメジャー

僕はむしろ、7小節目の、Cのコードの時に、メロディでファ(F音)を連打する箇所の方が、ちょっと力技な感じがするのですが(ファが、Cメジャーのテンションとしては使われることの少ない11thになるので)、この箇所もフリジアン・モードで解釈すれば、いけるのでは、と思います。

通常、モードの楽曲の場合、コード進行は、1発 or 2発コードを延々と繰り返すことが多く、フリジアンであれば、よくある動きの例として、Eマイナー・キーでしたら、

・Em 一発

・Em | F/E | × ∞

などが挙げられます。また、

・Em | C/E | × ∞

もいけそうです。この場合、C/E を分数コードにしなければ、Cメジャーになるので、「Step and a step」の7小節目もいけるのでは。(耳コピの限界がありますが、ここのコードがもし、Csus4 であれば、文句なしにOKです)

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ここまで見てきた部分、「Eマイナー・キーに転調して Eフリジアンモード」と考えずに、「Gメジャー・キーのまま、Gミクソリディアン・スケール(ソ・ラ・シ・ド・レ・ミ・ファ)を使用」とも考えることもできるのですが、

自分の場合は、ここはブルースを連想させるミクソリディアンより、フリジアンの持つ独特な響きを感じるので、完全に聴感上の印象としてですが、Eフリジアン・モードと解釈しています。ただ、もし1コーラス4小節目の2~4拍目の、コード楽器のお休み箇所に当たるコードが、前述したG7(13) or Em / G ではないかということを重要視すれば、Gミクソリディアンで解釈するのも、十分有りだと思います。

フリジアン・モードの使われている楽曲で、僕の中で特に印象が強いのは、ジャズ・ピアニストのキース・ジャレットの「At The Deer Head Inn」に収録されている、「You Don’t Know What Love Is(邦題:恋の味をご存知ないのね)」の8分過ぎ~ラストまでの部分です。この部分と「Step and a step」の話題箇所は、同じ響きを感じます。(キース・ジャレットさんの演奏は、他のスケールも織り交ぜて使ってきておりますが)

フリジアン・モードは、実は、R&B や HIP HOP、EDM etc… 意外と昨今の楽曲でも普通に使われているのですが、このNiziUさんの「Step and a step」は、1発 or 2発コードのような使い方ではなく、通常の「コーダル(コードがどんどん変わっていく)」なコード進行の中に、瞬間的に使われているのが、かなり斬新に聴こえます。

また、音楽に携わる方で、これを良しとしない人の気持ちも、分からなくはありません。おそらく、人を教える仕事に携わっている方も多いのでは、と思います。この「Step and a step」の手法は、かなり高度で斬新なものです。作曲をこれから始めようと思っている人が、成熟していない状態で、偶然この曲のような手法を使った場合、それを手放しで良しとしてしまうと、作曲の基本の部分をしっかりマスターしないまま、先に進んでしまう危惧があるからです。例えるなら、野球でバッティングの基本を知らないで、理解が浅いまま、表面的にイチロー選手の真似をたまたまできてしまった、ような感じでしょうか(あれ、ちょっと違ってたらごめんなさい 笑)

NiziUさんの、プレデビュー楽曲「Make you happy」でも、J.Y.Park さんは、積極的に、短7度を楽曲に使ってきていますので(こちらはブルージーな使い方です)、多分この響きが好きな方なんだろうな、と思います。でも、おそらく、今回僕が書いたように、細かく解析して作ったというより、まず好きな音、カッコいい音を作ろうと思って作ってみて、後から理に適っているかを考えて、最終的にこのメロディ、コード進行に決めたのではないかと、推測しています。そして、こういうタイプの音の重ね方は、もしかしたら自分が今まで意識して聴いていなかっただけで、K-POPでは比較的よく見られるのかもしれません。そのあたりも意識しながら、今後K-POPを聴いていくと、いろいろな発見がありそうです。

結果的に「Step and a step」は、この箇所がすごく印象に残るフックとなっており、「今年最もAメロが注目された楽曲になったのでは?」と思います。

いずれにしても、「たくさんの同業者達に、ここまで曲を分析される側にいる」というのは、それだけでもすごいことです! 分析しておいてなんなのですが、ものを作る人間なら、そこを目指していかなきゃ、って思います。

以上、僕なりの解釈でした。他にも、いくつかの解釈の仕方があるかもしれません。(実はこの記事を書きながら、何度も聴いているうちに、このファは、単なるブルーノートの短7度なのでは、という気持ちも少なからず湧いてきております。まったく人間の耳はいい加減なものです 笑)

「Step and a step」、Aメロだけでなく、サビもサウンドもとてもキャッチーで素敵な楽曲です。特に、サビの入りの「シッシソラッ」は、シンプルながらも、ありそうでない、可愛らしいリズムを持ったフレーズで、とても新鮮です。大ヒットして、NiziUさんが今後益々活躍されることを願っております!

NiziU さんデビュー・シングル『Step and a step』の、話題のメロディ、コード進行(改訂版)」への3件のフィードバック

  1. 詳細なご解説、ありがとうございます。僕はメジャスケールやマイナースケールに毛が生えた程度のスケールしか知らないので、きちんと理解するのは難しかったのですが、とても参考になりました。
    その上で、よろしければ1つ質問させていただきたいのですが、いわゆるその曲のメジャー/マイナースケール以外の音が出てくるようなポップスの曲はすごくたくさんあると思います。ブルーノート等もありますし、部分転調のようなもの含め、多くのポップスの曲の中に一度はスケールアウトしている音が出てくる印象です。その中で、なぜこの Step and a step の A メロがここまで話題になるのか、とても気になっていました。やはり、音楽理論的にはポップスでよくあるスケールアウトとは違う動きをしているのでしょうか?
    もしお時間あればコメントで教えていただけるととても嬉しいです。不躾なコメントで失礼しましたm(_ _)m

  2. コメントありがとうございます! 私も実は、そこまで音楽理論は明るくないのですが、そう仰っていただけると嬉しいです! この曲のAメロ、というか4小節目がなぜここまで議論されるか、ですが、私は、2つ思うところがあります。

    一つは、4小節目に入る手前の、「安心して」の「して」のメロディが、予定調和の「ラソ」ではなく、「ソファ」と来ていることです。メロディとコードの予定調和の関係を、敢えて崩すことにより、その後の4小節目のメロディが、すごく前衛的に聴こえます。

    もう一つは、1コーラス目の4小節目は、Emの次のコードが、バッサリ抜かれています。この部分は2コーラス目で、G7(13)の省略形ともとれる、Em/G が来ると種明かしされるのですが、1コーラス目では、あたかも、Emのコードが鳴り続けている中でメロディが動いているように、聴き手が「錯覚」してしまうことだと思います。

    1コーラス目の、Aメロの4小節目だけに限っていえば、聴き手を「錯覚」させるテクニックを使用している部分が大きく、実際は、音楽理論的に見ても、全く問題ないと私は思います。おそらく、J.Y.Parkさんは、確信的にやっているのではと思いますね!

    1. さっそくご丁寧なお返事、ありがとうございます!
      あらためて「安心して」のメロディを「ラソ」にした場合と「ソファ」にした場合を自分で演奏しながら、確かめて見ようと思います。

      たしかに1コーラス目はコード進行がないため、Em の延長だと考えるとメロディがすごいズレてない!?と感じるということですね。逆に言えば1コーラス目から2番 A メロのようにしっかりコードが入っていればここまで議論にはならなかったのかもしれませんね。
      そして多くの方が「最初は違和感あったけど、何度も聞いていると癖になる」と言っているのもそれが理由なのかもしれませんね。

      引き続き研究してみます!ご親切な回答、本当にありがとうございました。

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