疲れた時に聴く、お薦めのCD その3

疲れた時に聴くと心が落ち着く、お薦めできるCDアルバムの紹介、今回が最後になります。

○ 徳永英明 / VOCALIST

徳永英明さんの2005年の作品。女性アーティストの、時代を超えた数々の名曲をカバーしており、当時、既にシンガー・ソングライターとしての確固たる地位を築いていた、徳永さんのボーカリストとしての評価を、更に高めたアルバムです。

カバーアーティストも、中島みゆきさん、竹内まりやさん、DREAMS COME TRUEさん、荒井由実さんetc… そうそうたる方で、また、オリジナリティのひじょうに強い方ばかりなのですが、このアルバムを聴いていると、「これらの楽曲は、徳永英明を想定して作られた作品なのでは?」と思えてしまうほど、完全に自分のものとして、自らの個性を全面に出して歌われています。サウンド面も、徳永さんの歌声を持ち味を存分に生かした、主張し過ぎず、出るところは出る、素晴らしいアレンジ、演奏がなされています。

徳永英明さんの声は、とにかく心地良く、もし倍音を測定できるような機械があって、測ったとしたら、おそらく、相当の数値が出るのでは、と思います。

熱唱もかなりできる方ですが、囁くように歌う箇所も、優しく且つしっかりと歌われており、「歌って大きな声でパワフルに歌わなくても、ちゃんと人に届けることができるんだな」ということを、聴いていて再認識させられます。(ピアノなどの楽器もそうですね!)

この「VOCALIST」シリーズは、他にも何枚かアルバムが発売されており、どれもおすすめだと思います。

○ 平井堅 / Ken’s Bar Ⅲ

平井堅さんの2014年のアルバム。平井堅さんが、1998年からスタートした、アコースティック形式の、コンセプトライブ「Ken’s Bar」の様子を、収録した作品です。

自身のオリジナル曲も、カバー曲も、とにかく、時代を超えてずっと残っていきそうな名曲を集めて歌われているのですが、長渕剛さんの「順子」や、ジャミロクワイさんの「Virtual Insanity」が、何の違和感もなく入ってきていたりして、本当に、「音楽にジャンルなんて関係ない、良いものは良い!」ということを、感じさせてくれるアルバムです。もちろん、歌唱もバックの演奏も超一流です。

僕はボーカリストではないので、専門的な技術は分からないのですが、平井堅さんの歌で、いつもすごいと思うところがあります。

平井さんは、全体的に地声と裏声を混ぜた歌い方をされていて、それが声が心地良く聞こえる要因にもなっているのですが、全体的に、音を切るタイミングを、他のアーティストに比べて、ギリギリまで伸ばしている、例えば四分音符の長さなら、かなり四分音符に近いタイミングで切っていくのが、彼の特徴だと思います。

このスタイルの歌唱法だと、並のアーティストの場合、バラードではない、アップテンポの楽曲だと、果たしてどう歌うのかな、と思うのですが、平井さんの場合、アップテンポで、また16分音符と休符を織り交ぜた、畳み掛けるようなフレーズも、実に器用に、グルーヴィに歌われています。それも「歌いこなす」というレベルではなく、完全に余裕を持って歌われています。この辺りのテクニックは、一体どうされているのだろう、といつも興味深く思っています。

僕は昔、新宿にある「ライブハウス21世紀」というお店で、お酒を飲んでいるお客さまの、バックバンドとして演奏していたことがあるのですが、実は平井堅さんは、そのお店のOBでもあり(僕が入った頃は、既にメジャー・デビューされていましたが)、とても尊敬している大先輩でもあります。

数年前に、その「ライブハウス21世紀」で、古舘伊知郎さんがインタビュアーとして平井堅さんにお話を伺う、という内容の番組の、テレビ収録が入り、僕も見学させていただいたことがありました。その時に、かなり近い場所で、生歌も聴かせていただきましたが、「CDと全く変わらない、ピッチが全くずれない、むしろCDより上手い」歌で、本当にびっくりしました。もちろん、正確さのみが全てではないですが、これが本当のプロフェッショナルか、とまざまざと感じたのを、とても覚えています。

最後は、この人のアルバムです!

○ ASKA / SCENE

1988年にリリースされた、ASKA(飛鳥涼)さんの、ソロとしてのファーストアルバムです。実は、CHAGE & ASKAさんの楽曲を聴く時は、アルバム単位ではなく、自分で作成したプレイリストを使って聴くことが多いのですが、今回のタイトルの趣旨で考えたら、どれを選ぶか、と問われたら、このアルバムをあげたいなと思います。

僕がASKAさんのソロで、初めて知った楽曲は、「はじまりはいつも雨」で、これは、2作目アルバム「SCENE Ⅱ」に収録されており、セールス的にも素晴らしかったので、こちらを選んでも良かったのですが、個人的に「伝わりますか」が、曲、歌詞ともに、とても好きなので、「SCENE」にさせていただきました。(その時の気分で変わるかもしれません)

ちなみに、「伝わりますか」カラオケで歌うと、CHAGE & ASKAさんの楽曲の中でも、かなり難しい部類に入ります。音域が広いのもありますが、歌っていて、どこに力を入れていいのか、分からないのです。同じような意味で、「天気予報の恋人」もとても難しい楽曲です。これらを楽に歌いこなしているASKAさん、本当にすごいと思います。

この作品は、オリジナル曲が中心ですが、主に、他のアーティストに提供した作品の、セルフカバーを中心に構成されており、「職業作家」としての、飛鳥涼の素晴らしさを、味わえるアルバムになっています。「伝わりますか(ちあきなおみさんに提供)」はもちろん、どの楽曲も名曲ばかりですが、個人的には、テレサ・テンさんに提供した「今でも」という曲が、メロディ、歌詞ともに、とても素敵です。

ASKAさんは、熱唱、シャウトは勿論ですが、同時に、ウィスパー・ボイスも持ち味で、激しい歌も優しい歌も、アップテンポでもバラードでも、何でも歌える、オールラウンドなアーティストです。

そして、最近、気づいたのですが、ASKAさんの歌唱は、イメージ的には、「線」ではなくて、「太くて長い円柱」を連想させます。つまり、二次元ではなく、三次元を感じさせる、立体的な歌、なのです。

これは、僕が勝手に感じている、かなり抽象的な感覚なので、他の方がどう思われるかわかりませんが、こう聴こえるのは、きっと何らかの理由、テクニックを使われていると思います。そのあたりも意識しながら、聴くのもおもしろいかな、と思います。

今回紹介しました、3人のアーティストに共通するのは、皆さん、自分の楽曲も、他の人の楽曲も、分け隔てなく、「良いものは良い!」という感覚を持っていること、そして、それらを、自分のオリジナリティを最大限に出して歌うことのできる人たちだ、というところだと思います。

以上、疲れた時に聴くと心が落ち着く、お薦めできるCDアルバム、最終回でした!

大変な状況が続きますが、無理なく、お身体と心を大切に、皆さま週末をお過ごしください。

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