疲れた時に聴く、お薦めのCD

 
今、日本、いや世界全体が、殺伐としている状況ですので、今回は、疲れた時に聴くと心が落ち着く、僕がお薦めできるCDアルバムを紹介したいと思います。
○ J.S. バッハ / 平均律クラヴィーア曲集(選集)

僕は、クラシックを幼少からやってきた人間ではないのですが、聴くのは大好きです。このアルバムはなぜか、自分のパソコンの、iTunesの再生回数でダントツのトップに来ています。
「『平均律』を使うと、どんな調で弾いても、同じように聞こえますよ」、ということを証明するために、バッハさんが12のキーの長調と短調で作った、数々の曲が収録されているのですが、いわゆる実験的な曲だったり、いかにも練習曲っぽい曲ではなく、とても音楽性の高い、美しい作品に仕上がっています。
因みに学生の頃、クラシックピアノ系サークルにも顔を出していたことがありましたが、アマチュアだとどうしても、ショパンやリストなど、一聴、技巧的に目立つ作品の方が、バッハやモーツァルトより、いわゆる「格上」なもの、として見なされる傾向があったような気がします。でも、バッハの曲って、何となくループ感が漂っていて、、一度ミスしたら、そこから立て直せない曲が多くて、実は技巧的に簡単な作品は、少ないような気がします。
○ David Benoit / Letter To Evan

僕が一番好きなアーティストの一人、デヴィッド・ベノワさんの、ジャズ作品です。ビル・エヴァンスのトリビュート作品で、ギターのラリー・カールトンも参加しています。
デヴィッド・ベノワさんの作品は、実は「海岸をドライブする時のBGMにぴったりな、サラーっと聴けて、綺麗でお洒落な音楽だね…」というものは意外と少なく、フュージョンやスムース・ジャズ、というジャンルの人の中では、かなり起承転結がはっきりしていて、メリハリがあってライブ感に溢れ、メロディが際立っていて、ドラマチックに聴かせる曲が多いです。(そもそも、便宜的にカテゴライズされているだけで、僕はベノワさんのことは「ロックスピリッツと、ジャズのテクニックを駆使して、オールラウンドな音楽を表現する人」だと、勝手に思っています。)
しかし、このアルバムは、ベノワさん独特の、ドラマチックな要素を持ちながらも、とても優しい音に仕上がっていて、聴き応えがありながらも、まるでヒーリング・ミュージックのような心地よさに満ち溢れています。(これ、他のアーティストなら、どちらかの要素に偏ることがひじょうに多いのですが)
「優しい音」に感じるには、おそらく、このアルバムでのベノワさんの演奏は、一般的なジャズでよく使われるような、難解なスケールをそれほど使わずに、インプロビゼーションを展開しているからだと思っています。
ベノワさんのすごいところは、普通のアーティストなら、「こんなのはジャズじゃない!」と言われそうな、比較的易しい、ボイシングやスケールを使ったアプローチをしている時でも、ちゃんとジャズスピリッツに溢れ、ストーリーのある演奏ができるところです。
 
そうかと思うと、別のアルバムでは、完全ジャズ畑の人も凌駕するような演奏も展開したりします。たとえば、このアルバムの1曲目に収録されている、「Letter To Evan」は、動画に上がっているライブ映像を見ると、ある時はビル・エヴァンス、またある時は、オスカー・ピーターソンを彷彿させるようなアプローチで、熱いインプロビゼーションを展開しています。
 
その時その時のコンセプトに合わせ、最も適切なスタイルで演奏できて、それでいて自分のカラーをしっかり出せる、とても稀有なアーティストだと思います。(そういう意味では、CHAGE & ASKAさんにもとても通じる部分があると思います)
この作品は、お風呂上がりで寝る前だったり、また逆に、徹夜で仕事しなければならない時の前など、とにかくリラックスしたい時に聴くことが多いです。
○ René Urtreger / Onirica

フランスのピアニストで、「ルネ・ユルトルジェ」と読むみたいです。
昔、新宿の「ライブハウス21世紀」というお店で、バック・バンドでキーボードを弾いていたのですが(ブログの最初の方に書いています)、そこを卒業する際、バンド・マスターの山本さんに、いただいたCDアルバムです。
実は、最初何度か聴いてから、しばらく聴いていなかったのですが、数年前にiTunesに入れてからは、「なんて美しい作品なんだろう!」と思い、落ち着きたい時、何度も聴くようになりました。本当に、こういう作品を選んでくださったことに、感謝します。
全曲、ピアノのみの作品です。ピアノ演奏の上手さ、曲やインプロビゼーションの美しさ、そして、グルーヴの素晴らしさ、、全てにおいて最高な作品です。
ミッシェル・ルグランさんもそうですが、フランスのジャズの人でいつも不思議なのは、ジャズを演奏する時によく使う、同じスケールを使っていても、「これ絶対にフランスの人だ!」と聴いていて分かるような、フレーズやボイシングになりますよね? あれは一体どうなっているんだろう、っていつも思います。  
この作品はどちらかというと、電話などで真面目な話をしなければならない時の前などに、心落ち着かせるために聴くことが多いです。
○ Hilary James & Bob James / Flesh And Blood

フュージョン界の超大物、ボブ・ジェームスが、歌手である娘のヒラリー・ジェームスと、共演したアルバムです。ボブ・ジェームス作品の中では、それほど知られておりませんが、本当に素敵な、名曲揃いのアルバムです。
1995年の作品ですから、かなり古い筈なのですが、音楽的には全くそういう要素を感じさせない、普遍性を持っています。
ボブ・ジェームスさんは、バッハに似ていて、どちらかというと、楽曲のメロディの持つインパクトというより、曲全体を包みこむ雰囲気とか世界観で勝負していくタイプだと思うのですが(アイドルグループの個性に例えれば、AKB48さんというより、乃木坂46さんのようなタイプ)、このアルバムは、歌ものということもあって、メロディもかなり前面に出てきています。そして、娘のヒラリーの声が、とてもキュートで、なおかつ歌唱力も非常に高い。声で癒され、ピアノで癒される、最高の親子の共演が生み出した、傑作だと思います。(※あくまで聴かせ方としての話であり、ボブ・ジャームスさんはメロディ・メーカーとして非常に秀逸です。)
また、ボブ・ジェームスさんのインプロビゼーションは、休符や、一つ一つのフレーズ(モチーフ)をとても上手く使って展開していくのが特徴で、音数多く弾き込まないのですが、抜群のタイム感を生かしながら、大事な音を大事な場所で入れていく、ジャズのお手本のようなスタイルです。それでいて、和製感覚的に全く凡庸でなく、美しく情熱的で、オリジナリティに満ち溢れています。(語彙力が不足していて、なんだか星占いの解説みたいな表現になってしまいました 笑)
○ Lyle Mays / Lyle Mays

パット・メセニー・グループのキーボーディスト(ピアニスト)、ライル・メイズの、ソロ・デビュー・アルバムです。最近、惜しくも亡くなってしまいました。
パット・メセニー・グループでは、サウンド面でも重要な役割を果たしていたみたいで、まるでキーボードが前面に出たパット・メセニー・グループ、のような印象です。
このアルバム、すごく聴き心地が良いのですが、よく聴いてみると、ものすごく熱いのです。演奏も熱いし、楽曲も非常にプログレッシブです。コード進行やリズムなど、どうやったらこれが思いつくのか、という曲も多いです。やっていることは難解で前衛的で熱いのに、とても癒されるアルバムです。
ライル・メイズさんのピアノ演奏を聴いている時、「キース・ジャレットが若かったら、こういう演奏をするんだろうなあ」とよく思ったのですが、またそこに、クラシックや現代音楽的な要素が入ってくるのも特徴です。
ちなみにこのアルバムに収録されている「Mirror Of The Heart」という曲は、ジャズピアノを習い初めて、聴音がちょっとできるようになった頃、耳コピーをした思い出があります。
最後はこれです!
○ rei harakami / [lust]

レイ・ハラカミさんの作品。この方も亡くなってしまいました。
数年前に、勉強も兼ねて、エレクトロ全般を、機会があったら聴いていた時期があったのですが、このアルバムは、とてもハマって、何度も聴きました。
このアルバムで使用された音源は、Roland SC-88 pro(カラオケ制作などで使用されることも多い)のみ、ということらしいのですが、本当なのでしょうか? それくらい、表現力、心地よさに溢れた作品です。これを聴くと、制作する時、ついつい「音源が~、プラグインが~」と、そこにばかり捉われてしまうのも、考えものかな、という気になります。(勿論、ものすごく大切なことなのですが)
このアルバムは、休みの日に疲れて昼寝したくなった時に、よく聴きました。小音で聴くと、ものすごく心地よく眠りに入ることができます。
書いてみると、ほとんどが、ジャズ寄りな、インストルメンタル・ミュージックになってしまいました。(しかも鍵盤系ばかり 笑) 廃盤になっていたり、手に入りにくいものもあるかもしれません。今回、紹介するにあたって思ったのは、自分が好きなタイプの、癒される音楽は、意外と難しいことや前衛的なこと、情熱的なことをやっているのですが、それをふわっと包み込むようなサウンド(または音の並べ方)で、仕上げているものが多いのかな、ということです。
まだまだ、紹介したいアルバムがたくさんあるので、もし次にも機会があれば、今度は歌もの作品(主にJ-POP)も含めて、紹介していきたいと思います!
 

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