作曲家から見た、CHAGE & ASKA その2

前回だけではとても書ききれなかったので、今回も、CHAGE & ASKA さんの音楽の魅力について、作曲の技術的な部分も含めて、書いていきたいと思います。
 
CHAGE & ASKA さん(以下、C&Aさんと表記させていただきます)の楽曲を聴いていて、気が付くことがあるのですが、他のアーティストさんのヒット曲に比べて、「売れるための技法」、というのを、それほど使っていないように思います。
 
コール & レスポンスだったり、曲中に聴いている人が「合いの手」を入れられる場所があったり、インパクトのあるリズムのキメが入ったりetc…
 
もちろん、全く使っていないわけではなく、ましてやあれだけ歌える二人なので、歌の掛け合いも十分見せ場としてあるのですが、、、あからさまに「曲をヒットさせるために、そういう箇所を意図して作っている」感じが、あまりしないのです。あくまで、「曲の展開に必要だから、そこに入れている」そんな感じがします。(ただ、歌唱力の素晴らしさを聴き手が堪能できる箇所は、かなり狙って作られていると思います)
 
例えば、つんくさん作曲の、モーニング娘。さんの「LOVEマシーン」などは、カラオケで歌ってみると分かりますが、歌っている人がいて、それを聴いている人も、そこに参加できるような「仕掛け」のある場所が、1コーラスの中だけでも、ふんだんに出てきます。まさに、「ヒット曲は、こういう風に作ればいいんだ」という教科書のような、素晴らしい楽曲です。僕はこういうタイプの曲も大好きです。そして、作曲をしている人なら、絶対にマスターしたい技法でもあります。
 
それに対して、C&Aさんの、200万枚以上売れた大ヒット曲「YAH YAH YAH」は、意外なのですが、そういう仕掛けが、それほど入ってきていません。2コーラス目終わった後の、「Hang in there!」から、大サビ最後の「強く 強く ah ah ah ah 」の間に、コール & レスポンス できる箇所がありますが、その部分以外は、どちらかというと仕掛けの妙ではなく、純粋に良質なメロディで勝負している、そんな印象を受けます。(サビは確かに、みんなで歌うとすごく盛り上がりますが、仕掛けを入れている、というのとは、また違う印象を受けます)
 
僕の勝手な推測なのですが、C&Aさんは、メジャー・デビューのきっかけとなった、ヤマハポピュラーソングコンテストの際に、「コンテストで勝ち上がるためには、こういう風に作れば良い」という、「売れるための仕掛け」をかなり考えたと思うのですが(たとえば、サビ前で「バンッ!」 とブレイクを入れるetc…)、
 
プロになった時に、なるべくなら、そういう要素に必要以上に頼らず、純粋に良いメロディの楽曲を作って、その上でヒットさせよう、という、ある種の決意のようなものを持ったのではないかと、思っています。(もし僕の認識が違っていたら、ごめんなさい)
 
そして、もう一つ、すごく意外なことがあります。コード進行の達人、とも言えるC&Aさんですが、サビの最初のコードが、サブドミナントで始まる曲が、とても少ないのです。サブドミナントとは、コードを機能で分けた時の種類の一つで、Cメジャー・キー(ハ長調)の場合、Fメジャー(or FM7)、Dm(or Dm7)、がそれに当たります。
 
今パッと思いつくものでは、「river」「You are free」「ある晴れた金曜日の朝」「終章(エピローグ)」「告白」etc… あることはあるのですが、全体の楽曲数からすると、かなり少ない気がします。(どちらかというと、CHAGEさんの方が多いかもしれません)
 
今でこそ、サビがサブドミナントから入る楽曲はいくらでもありますが、その昔(まだ僕が作曲家を目指していたような頃)の、ある作曲本には「サビの頭がサブドミナントから入ると、斬新な雰囲気になる」などと書かれていたりもしました。
 
あれだけのコード進行を自在にこなす人たちですから、できないはずがありません。もしかしたら、C&Aさんは、楽曲を書く時に、「安易にそこに頼らない」という気持ちがあって、サブドミナント始まりの曲が少ないのではないか、と僕は勝手に思っています。
 
その他にも、転調の名人であるにも関わらず、曲のラストサビだけ半音高く転調する、という、楽曲を盛り上げるための常套手段を使った楽曲も、意外なほど少なかったり(「One Day」くらい?)、
 
また、モチーフ(1 or 2小節単位のフレーズ)を反復・応用・組み合わせながら、メロディを耳に残るように印象付ける、という、メロディ作りの基本を、敢えて使わないメロディをサビに持ってきたり(「けれど空は青」「not at all」などは、サビで同じ種類のモチーフを全く使っていませんが、超名曲です)、
 
C&Aさんは、「ヒット曲、印象に残る曲を書くための、定番の法則を、それほど積極的に使わない時がある。しかしそれでも、ヒット曲、印象に残る曲を十分に書ける」そういうアーティストではないか、と、僕は思っています。既存の先入観に頼らず、その時その時で一番良い選択をしながら曲作りをしていく、そういうアーティストだと思います。
 
次回は、「CHAGE & ASKA さんの楽曲の、このコード進行がすごい」と、個人的に思う箇所 etc… を、書いていければ、と思います。
 

 

(正直、このブログを閲覧されている方が急激に増えたので、かなり緊張しています 笑)

 

 

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