作曲する時、(特にこれから作曲を学ぼうとする人が言われる言葉として)
「なるべく、手グセでメロディ、コード進行を作ってはいけない」
ということを、時々耳にします。
おそらく、自分の好きなメロディの動きや、コード進行のパターンがある程度決まってくるので、毎回、それを使った、単調な曲になってしまう、という理由があるのでは、と思います。
僕は、どちらかというと、「手グセはどんどん使って良い!」と思っている方です。
超一流の作曲家の方々の代表曲を聴いてみると、おそらく、作曲者の名前が分からない時でも、「あ、この人が作ったのかな?」と、なんとなく分かるのではないかと、思うのです。それは、作曲者の個性を決定づけるような、手グセが入っているからだと思います。(代表的な方として、小室哲哉さんなどがそうじゃないかと思います。)
そして、それが魅力的だからこそ、今までに多くのリスナーの方々に支持される曲を生み出して来た、そう思います。
もし、「ワンパターンになるのが良くない」というのであれば、「手グセをどんどん増やすような練習」をすると良いと思います。
たとえば、僕は、ピアノの練習をする時、あるジャズの教則本を使うのですが、12のキーのツー・ファイブ・ワンを、1つのキーに付き10種類ずつ、弾いています。この練習の時は、即興のメロディではなく、教則本に書かれたように弾きます。フレーズはキー毎に、全て違います。
(ツー・ファイブ・ワン はCメジャー・キーだと、Dm9 -G7(13)- CM9、Cマイナー・キーだと、Dm7b5 – G7(b13) – Cm6 というコード進行が多いです。)
メジャー・キーと、マイナー・キーがあるので、合計で、
(12 × 10) × 2 = 240 パターン
のフレーズを、毎回弾きます。(実際は、これ以外にもいろんな練習をしますので、フレーズのパターンはこれより遥かに多くなります。)
ジャズのフレーズは、いわゆるメジャー・スケールや、ナチュラルマイナー・スケールに無い音もかなり出てきますので、これらのフレーズをそのまま、ポップスの歌メロに使う、というわけではないのですが(そもそもそのまま使ったら作曲ではないですが)、それでも、ふとしたところで、普段練習している音の動きが、作曲の時に反映されることが、よくあります。これも言ってしまえば、手グセです。(ストリングスなどの楽器パートになると、こういった練習で身についたフィーリングは、歌メロ以上にかなり役立ちます)
それ以外にも、主に鍵盤でメロディを作る人は、鼻歌で作ってみるとか、ギターなど違う楽器を使って作ってみるとか、ソフト音源で普段使わない音を選んで作ってみるとか、そういう方法も有効かもしれません。(これはどちらかというと、手グセを脱却する方法ですね)
コード進行も、手グセを使うと、確かに最初のうちは、いつも安易に使ってしまうパターンが出てくるかもしれません。でも、Aメロ – Bメロ – Cメロ と、各セクション毎に使うコード進行の、組み合わせを変えれば、それなりにバリエーションは出てくる、と思います。
そして、そのうちに、毎回一緒だと、作り手側が飽きてくると思うので、部分的に変更したりしているうちに、少しずつ、使えるコード進行の幅が広がってきます。(世に出ている、う~ん、と唸るようなコード進行の曲は、実は、いわゆる「普通」のコード進行の一部をちょっと変更している、そういうケースが多いです)
どんなコード進行があるのか、と、例を書こうと思ったのですが、そこまで書くのはちょっと、と思い、躊躇してしまいました 笑 もし、今後気が向いたら、紹介しますね。
そんなところで、僕は、作曲する際に、最初は手グセから入っていくのは、全然OKだと思います。ワンパターンだからと恥ずかしがらずに、どんどん曲を書いていく方が、作曲を身体で覚えていけると思います。そして、飽きてきたら(それは自分が成長した時なので)、少しずつ変化させていけば良い、また、手グセをどんどん増やしていくような努力をしていけば良いと思います。
1,000種類の手グセフレーズを持っている人と、手グセを使わずに100種類のフレーズしか作れない人なら、多分、前者の方が、作曲家としては個性もあって幅も広く、需要が大きいのではないか、そう思います。