その69 数学の先生

2006年のお話)
 
BoAさんのシングル曲「七色の明日 ~ brand new beat ~」が決まったことで、様々な大切な人たちに報告し、そして、たくさんのお祝いの言葉をいただいた。家族、同業者仲間、友人、周囲のお世話になっている方々etc… みんなとても驚き、喜んでいただいた。
 
どの仕事も大切で尊いものだけれど、、この仕事はそれまでの仕事とは、ちょっと意味合いの違うものだった。ほんのちょっとだけ、恩返しができたかな、と思った。
 
目標だった、オリコントップ10に入ること(ウィークリー3位、デイリー1位)、そして「ミュージック・ステーション」で歌われることも、実現できた。それにしても、自分の楽曲がテレビで歌われる時って、「歌詞大丈夫かな?」「転調する箇所、上手くいくかな?」とか、なんでこんなに緊張するものなんだろう 笑 
 
一人、報告しようかどうか、迷っている人がいた。高校時代に大変お世話になった、リカ先生だ。
 
リカ先生は、高校1年から3年まで、僕の担任だった。大学を卒業して数年目の、若い可愛らしい女の先生で、数学を担当していた。僕は、中学・高校一貫の進学校に通っていたので、中学時代からリカ先生には教えていただいていた。
 
先生自身が、とにかく数学が大好きな人で、授業が難しすぎて、着いていくだけで必死だった。だから、中学時代はどちらかというと苦手な先生だった。
 
高校に上がった時、リカ先生は僕のクラスの担任になった。僕は「数学が得意になるには、まず先生のことを好きにならなきゃ(変な意味じゃなく)」と思った。そして、中学生の時はみんな必須で出していたけれど、いつのまにかフェードアウトしていた日記を、高校になってからも、先生に出し続けた。(多分、高校で日記を先生に出していた人は僕だけだったのではと思う)
 
それから、、数学の成績は上がったかは分からないが、先生は、僕がどう頑張っているのか理解してくださって、なんでも思ったことを話して、悩みも相談できる、おねえさんのような先生になった。特に、人間関係でかなり悩んでいる時は、いろんな配慮をしていただいた。結局、3年間、ずっと担任だった。
 
僕は高校を卒業して以来、同窓会的なものにほぼ出ていなかった。大学一年生の時に一回参加したのみだ。高校時代の、大人しくて、気配を殺したような自分から脱却してしまいたい、という気持ちが強かった。それに加え、皆が社会人として立派にやっているだろう中、志半ばの状態で人に会うのが、なんだか気恥ずかしい気持ちがあった。
 
また、僕は高校時代、勉強ばかりしている、くそ真面目でつまらない奴だと思われているように感じていた。でも、それは、そうしないと学校に着いていけなかったからで、そのあたりもどう思われているのだろう、とそれも気になっていた。
 
その年の同窓会も断っていた。しかし、今回のことをきっかけに、リカ先生と話をして、昔のお礼を言いたいと思った。しかし、進学校を出た僕が、今こんなことしてると聞いて、どう思うのだろう…
 
恐る恐る、電話をかけてみた。

 

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