その59 ワルツ・フォー・デビイ と J-POP

2005年当時)
 
この頃は、いろんなアーティストのコンペティションにひたすら参加していたのだが、音楽的にこうしたいな、というのが、なんとなくあった。発注内容に合わせていくのが前提だけれど、音楽的にこの作家さんはこういう色があるな、というのを、少しずつ出せたらと思っていた。
 
自分の大好きなピアニストの、David Benoit さんやビル・エヴァンスの要素を、ジャネット・ジャクソン etc… 比較的、日本人でも聴きやすいタイプのR&Bに融合させて、それをJ-POPに昇華させたらどうなるか、ということを、漠然と考えていた。あからさまにジャズっぽくするとかではなく、一聴、流行りのJ-POPなんだけれど、でも何か普通じゃなくて新鮮だよね、というのが理想だった。
 
ジャネット・ジャクソンだと、「All For You」というアルバムが大好きで、何度も何度も聴いていた。この人に興味を持ったのは、2001年くらいに、島谷ひとみさんが「パピヨン~papillon~」という、洋楽のカバー曲を歌っていて、それがとても良かったので、その原曲も聴いてみたい、というのがきっかけだった。ジャネットが歌っている、原曲の「Doesn’t Really Matter」は、本当に本当に素晴らしかった。
 
(「パピヨン~papillon~」がきっかけで、作詞家の康珍化さんも好きになった。それ以降、アーティストの書く歌詞でなく、職業作詞家さんの歌詞もしっかり見るようになった。)
 
ある休みの日、、ジャズのスタンダード曲がずらっとならんでいる本を見ながら、なんとなくコード進行を追っていた。その中に、「ワルツ・フォー・デビイ」も載っていた。ジャズピアノが好きな人なら、誰でも知っている、ビル・エヴァンス作曲の名曲だ。
 
「ワルツ・フォー・デビイ」は大好きな曲だったのに、それまでなぜか弾いたことがなく、しっかりとコード進行を解析したこともなかったので、良い機会だと思い、メロディとコードを追いながら弾いていると、自分の中である発見があった。
 
この曲は大きく分けると、AメロとBメロの、2つのブロックで構成されている、A-B-A形式の曲だ。全体のキーはFメジャーだが、Aメロ部分に、部分転調が出てくる。Bメロにいく手前で、ツー・ファイブを繰り返しながら、Aメジャーになるのだ。(Am7 – Dm7 – Bm7(B7) – E7 – AM7)
 
ここは、なんとなく聴いているだけでも、とても心地よく印象に残る部分なのだが、そういう部分は得てして「普通じゃない(一般的でない)」ことが起こっていることが多い。この曲も例に漏れずだった。
 
Fメジャーの長3度上のAメジャー・キーに転調して、Bメロでは何事もなかったかのように、Fメジャー・キーに戻っている。しかも、飛び道具的なものではなく、あくまで自然なメロディの流れを損なわずに。
 
それまで、巷に溢れているJ-POPで(マニアックなのは除く)、短3度ではなく、長3度上への転調をしている楽曲は、ほぼ聴いたことはなかったので、この「ワルツ・フォー・デビイ」の転調は、非常に斬新だった。そして尚且つ「J-POPでも上手くやれば使えるかもしれない」と思えるものだった。(今は何でもありな時代なので、比較的普通にあるかもしれない)
 
そして、「ワルツ・フォー・デビイ」といえば3拍子だ。しかし、エヴァンスの演奏の場合、インプロヴィゼーションに入ると4拍子になる。ポップなJ-R&Bのメロディとリズムで、あくまで4拍子がメインだけれど、部分的に3拍子が変拍子として入ってくるような楽曲があったら、面白いんじゃないか、、、そう思った。(部分的に変拍子、というのは、David Benoitさんがよくやる手法だった。たとえば「Beach trails」みたいに。)
 
今度、曲を作る時、チャンスがあれば、今日覚えたことを試してみよう。どこかで良い反応が来るかもしれない。誰よりも 誰よりも…
 

 

(前回) その58 二人の女子高生

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