「ライブハウス新宿21世紀」の、オールディーズバンドの仕事でご一緒させていただいた方々は、皆さんやはり上手い方、素敵な方が多かったが、その中でも、印象に残っているシンガー、プレイヤーの方々が何人かいた。
シャンソンを歌うアキコさんは、面倒見が良く、表現力、ピッチの安定感、リズムの感じ方が抜群で、低音もかなり出る方だった。普通にバンド活動をしていたら、シャンソンなんて演奏する機会はまずないので、ひじょうに貴重な経験をさせていただいた。レパートリーは、テンポが一定でないタイプの曲も多かったので、呼吸を合わせて演奏していくという部分で、とても勉強になった。
サックス奏者のマドカさんは、自分の好きなジャズやそっち寄りの音楽のレパートリーが多く、バックで演奏する時は、いつも気合が入った。(どんな時も全力だったが特に) 大人の雰囲気があって、音楽的に万能な方で、苦手なことはないのではと思うくらい、この人がステージ上であたふたしているところを見たことがなかった。
ジャズを歌うエミコさんと、ソウル・ファンク系のカナンちゃん、、年齢的に近いこともあって、最初の頃、ガチガチに緊張していた自分に、何かと声をかけていただいた。僕はあまりいじられるのは好きじゃないけれど、好意でかまってくださったので、程よく緊張がほぐれた。
バンドのメンバーだと、バンドマスターのギターのヤマモトさん、、とにかくどんなキーの移調も完璧だった。最初はちょっと怖そうだったけれど、同じプロレス好きということで、親しみを感じた。努力している人や、見えないところで工夫している人をちゃんと見てくださり、とてもお世話になった。
そして、ベースのエンドウ君、ドラムのアカツカ君、、この二人の作り出すグルーヴは抜群だった。二人とも好青年で年も近かったので、三人で行動することも多かった。エンドウ君は今大活躍しているベーシストで、当時から向上心がとても強く、女性からも人気があった。アカツカ君は、今まで一緒に演奏したドラマーの中で、一番自分のリズムの取り方に近い。ステージの位置的に、キーボードの真正面がドラマーになるので、いつもアイコンタクトを取りながら演奏していた。今でも、生ドラムのプログラミングをする時は、「アカツカ君ならこう叩くだろうな」と思い出しながら入力している。
演奏した曲で印象に残っているのは、全てだが、強いて言えば、お客様がカラオケタイムで歌う、「加藤登紀子 / 琵琶湖周航の歌」だ。美しい曲だが、すごくゆったりしたテンポで、6番まである。演奏する時間帯がとにかく深夜なので、心地良いリズムに合わせて弾いていると、5番、6番あたりにくると、睡魔が襲ってくる。弾きながら眠らないようにするのに必死だった。
あとは、「Shocking Blue / Venus」。この曲はキーボードはそれほど難しくはなく、ほぼ同じ繰り返しなので、この曲を演奏している時に、いつもいろんなことを考えていた。「デモテープって、いつか受かるものなんだろうか」とか「この先一体どうなるんだろう」とか 。(もちろん、集中して演奏していた。)
その他にも、名前を挙げたらキリがないくらい、素敵なシンガーさん、プレイヤーさんに出会い、たくさんの方々にお世話になった。何よりも、こういう場所を与えてくださり、いろんな経験をさせていただいた、マスターにとても感謝だ。営業時間が深夜なので、本当に身体に気を付けて、いつまでもお元気でいてほしい。