95点から100点に… メロディを1コーラスに仕上げていく際の注意点

前回は、メロディが思い浮かばない時の、僕がよく使っている打開方法を書いていきましたが、今回は、メロディ(コード進行含む)が1コーラスほぼ出来上がっている時の、最後の仕上げの段階で、どういった点に注意しているか、自分が気を付けていることを書いていこうと思います。いわゆる、90点、95点のメロディを、100点にしていく方法ですね。

95点を100点に、なんて、なんだかおこがましいのですが、音楽は点数の付けられないジャンルなので、あくまで自分なりに、ということです。

(この記事は、「これからJ-POP の作曲を本格的にしてみたい」という方にオススメです)

◎ 1コーラスのメロディを、データとして見てみる

僕の場合、大体、1コーラスできた時点で(曲を作っている途中でもそうですが)、全体のメロディのバランスを、視覚的に見ていきます。この曲は女性ボーカルを想定したもので、キーはCメジャー、拍子は4/4、テンポはBPM122、8ビートと四つ打ちを混ぜたようなリズムの曲です。DAW(音楽制作ソフト)の、ピアノロールの画面の幅を、普段制作している時の表示よりも、極端にズームインで縮めていきます。下の画像のような感じです。

この曲の場合は、1コーラスの構成が、A – A’ – B – C – C’ となっています。この曲の場合は、C・C’ メロがサビに当たります。おおまかにいえば、ABC構成で、いわゆる、典型的な王道 J-POP の構成ですね。

(人によっては、サビをサビ、大サビをCメロ、と言うケースもありますが、現在の音楽業界では、慣習的にサビをCメロと言うことが多いです)

この曲の場合、女性キーで作っているのですが、メロディの一番低い音は、低いラ(A2)となり、一番高い音は、高いド(C4)になります。これも、とてもよくある女性キーの設定にしてあります。

◎ 各セクションで使われている音程を確認する

ここで、A・A’メロ、Bメロ、C・C’メロの、各セクション毎に、どれくらいの音程に音のデータが集まっているか、大まかに確認しています。

この曲は少し視覚的に分かりにくいかもしれませんが、Aメロ、Bメロ、Cメロ と進むにつれて、少しずつ高い音程に、音が集まるようになってきているのが、分かるでしょうか? これは1コーラス内で、楽曲を盛り上げていく際の、常套手段です。

僕は基本的には、このようにセクション毎の音程の密集度が、少しずつ高音域に上がっていくことを意識して曲を書いています。もちろん、こういう作り方だけが正しいわけではありません。サビで低いキーになって、あえて落ち着かせるタイプの名曲もたくさんありまし、サビのインパクトを強調するために、Bメロにとても低い音程を多用することもあります。

◎ 各セクション毎の、メロディの入るタイミングを確認する

次に、A・A’メロ、Bメロ、C・C’メロの、各セクションで、メロディがどのようなタイミングで入ってきているかを、確認します。これは、もう少しズームアウトして、見てみましょう!

A・A’ メロ(以下Aメロ)、Bメロの、メロディの入り方を見てください。Aメロは一休みして(実際には4分休符やすんで)、小節途中からメロディが入ってきます。対して Bメロは、直前の小節からメロディが入ってきています。こういう入り方を、「アーフタクト」と言います。

そして、サビにあたる、C・C’メロ(以下Cメロ)も、アーフタクトで、直前の小節からメロディが入ってきます。厳密にいうと、

Bメロのアーフタクト部分は、直前小節の2拍目半からメロディが開始

Cメロのアーフタクト部分は、直前小節の2拍目頭からメロディが開始

しています。

こうやって、各セクション毎の、メロディが始まるタイミングを微妙に変えることで(全て変えなくても、1セクションだけでも変えることで)、1コーラス聴いた時に、メリハリを感じる楽曲にしていきます。

もちろん、これも例外もたくさんあって、全てのセクションのメロディの入るタイミングを統一することによって、曲全体のインパクトを出す、という手法もあります。CHAGE & ASKA さんの「なぜに君は帰らない」などは、その好例です。(全て一拍目の頭からメロディが始まっています)

この曲は、メロディの最小単位であるモチーフも、どのセクションも統一されているので、聴いた人はすぐに覚えられるのではないでしょうか?

◎ 各セクション毎の、メロディの細かさを確認する 

今度は、Aメロ、Bメロ、Cメロの、各セクションで使われているメロディが、どれくらいの細かい音符で構成されているのか、これも大まかに確認していきます。本当に「大まか」でいいのです。(ちょっと横幅が長くなりそうなセクションは前半のみにしますね)

(Aメロ)

(Bメロ)

(Cメロ)

Aメロ、Cメロが、4分音符、8分音符中心なのに対して、Bメロは、16分音符が多用されているのが、分かるでしょうか?

これも1コーラス聴いた時に、メリハリを付けるための手法です。もちろん、ロングトーン中心のセクションがあっても良いと思います。

◎ 各セクション毎のメロディの第1音(& 第1小節目からみた第1音)を確認する

これが意外と大事なのですが、Aメロ、Bメロ、Cメロの各セクションで、メロディの第1音、そしてセクションの第1小節目からみた第1音が、どのような高さから入っているかを、上にあげた画像を参照しながら、確認します。

Aメロは、ミ(E3)から入り

Bメロは、ミ(E3)からアーフタクトで入り、1拍目にド(C3)が来て、

Cメロは、高いド(C4)からアーフタクトで入り、1拍目にラ(A3)が来ています。

セクション毎に比べてみると、最初に使っている音の高さが、みんな違うのが分かるでしょう!

え? AメロとBメロは、最初の音は一緒じゃないかって? 確かにそうなのですが、Bメロはアーフタクトから入っているので、セクションの第1小節目からみた第1音は、Aメロとは違う音程になっています。このように、アーフタクトが使われている場合は、純粋に第1音か、セクションの第1小節目からみた第1音を、その前後のセクションと変えることによって、一本調子にならないように工夫しているのです。

(必ずしも全てのセクションで違う音から入る必要はなく、一つでも違う音から入っているセクションがあると、曲にメリハリが出ます。)

サビにあたるCメロは盛り上げたいので、アーフタクトの最初の音は、1コーラスの中で最も高い音にしています。

サビの出だしを高音域から入る、というのも、楽曲を印象づける一般的な手法です。ですが、これもあくまでも王道の一つであって、これに捉われすぎず、本当にケース・バイ・ケースで考えていいと思います。サビを低い音から入れば、上昇するタイプのメロディを使用しながら、その後どんどん高い音程を使っていくことができ、ちゃんと盛り上げることができるのです。その例として、手前味噌で失礼しますが、僕が2006年に書いた、BoAさんの「七色の明日~brand new beat~」を挙げることができます。

サビは、アーフタクトで低いラ(A2)から入っておりますが、上昇メロディを使いながら、トップは高いレ(D4)まで使用しているのです! 音域が広くて歌唱力に定評のあるBoA さんならではの歌になっているのではないでしょうか?

ここまでは、純粋にメロディを確認してきましたが、同様にコード進行もみていきましょう!

◎ 1コーラス全体を見て、各セクション毎のコード・チェンジのタイミングを確認する

何度も書いておりますが、この作業は、「大まか」にやることがコツです。ちょっと見にくいかもしれませんが、一番長い水色の横棒が2小節、その半分の長さが1小節、になります。

これを見ると、Aメロは、2小節単位でコード・チェンジしている箇所が多く、ゆったりした印象になります。

Bメロになると、2小節単位もありますが、1小節、さらには半分の2拍単位でコード・チェンジする箇所が増えてきます。

Cメロになると、2小節同じコード、という箇所はなくなり、1小節、2拍単位で、コード・チェンジしていきます。

ここで言いたいのは、「サビに向かうほど、コード・チェンジを忙しくしろ」ということでは全くなく、各セクション毎にコード・チェンジのタイミングを巧みに変えていくことにより、1コーラス聴いた時のメリハリが出る、ということです。

◎ 各セクション毎の、最初のコードを確認する

今度は、各セクション毎に、どのようなコードから始まっているかを、確認します。そして、それらがどのような機能(トニック、ドミナント、サブドミナント etc… )を持っているかも、確認します。この曲の場合は、Cメジャー・キーで、1コーラスの中での転調はありませんので、比較的理解しやすいかと思います。

ピアノロールだと分かりずらいかもしれませんが

Aメロ:Am(Ⅵm, トニック代理)

Bメロ:Dm(Ⅱm,  サブドミナント代理)

Cメロ:C   (Ⅰ,    トニック)

となります。

実はこの「最初のコードの入り方」というのは、とても重要な部分で、ここを、機能的に違うタイプのコードにしていくか、もしくは同タイプでも、代理コードを使うなどして変化を付けていくか、などして、曲全体のメリハリを付けていきます。ここを単調にしてしまうと、曲の印象はパッとしないものになります。(セクション毎に転調しているタイプの曲は、ここはそれほど気にしなくて良いケースもあります。)

しかし、これも例外が多くて、たとえば、ソウルやR&B 調の、ちょっとお洒落な楽曲の場合、各セクションの始まりを、全てサブドミナントか、その代理コード にしてしまうこともとても多く、むしろその方がカッコよくなることも多いです。有名どころでは、DREAMS COME TRUEさんの「決戦は金曜日」などがそうです。

こういうスタイルの曲で同様の例は、邦楽、洋楽問わず本当にたくさんありますので、探してみると面白いですよ!

◎ まとめ

他にもまだまだたくさんあるのですが、基本的にはこのようなことを、僕は曲をまとめていく作業の過程で、確認していきます。(今回は割愛させていただきましたが、セクション毎の終わり方もひじょうに大切です) 実は曲を作っている途中過程でも、常に意識しながら書いています。「曲が単調にならないようにメリハリをつける」「覚えてもらいやすくする」という目的のためです。今回書いたことは、バラード、アップテンポ問わず、かなり効果的なものです。とりあえず1コーラス完成させたけれど納得いかない箇所が少し残っている時、僕は上記のようなことを一つ一つ(でも大まかに 笑)チェックして、微調整しながら、可能な限り100点に近付けていきます。

しかし、ここで気を付けるべきは、「良い曲には例外がたくさんある、むしろ例外だらけ」ということです。つらつら書いてきましたが、あくまで僕が気を付けていることなので、これに当てはまらなくても、良い曲を作ることはぜんぜん可能だし、もっと良い方法があることを知っているなら、それを使っていけばいいと思います。聴いてよければそれで良いのです! でも、もし自己流で曲作りをしていて、なにか行き詰まった時、この記事を読まれた方は、ちょっとここで書いてあるような方法も試してみよう、と思っていただけると、とてもうれしいです!

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