コロナ禍での作曲の仕事

年末まであと一ヶ月少しありますが、2020年が、こんな年になるなんて、誰が想像できたでしょうか?

それくらい、今年は、新型コロナウィルスに翻弄され、それに伴う人々の生活様式、価値観が大きく変わった年になったのではと思います。作曲の仕事も、例外ではありませんでした。

しかし、大変な面を見ればきりがないのですが、僕は今のところは、それほど、このコロナ禍の状況を、悲観的に捉えることなく、仕事に向き合うことができています。

でも一時期、ずっとステイホームが続いていた時、正直「どうせ来年は死んでるんだし」とか思っていたこともあります。ある時に考え方を切り替えることができた、と言った方が正しいかもしれません。大変は大変だし、思い通りにならないことも多々あるのですが、気持ち的には比較的落ち着いています。(僕は、「だめ」とか「よくない」とは言いません、「大変」と言います)

昨年から、コロナが来ることは全く知らずに、YouTubeなどSNSを使った発信などをしたり、サブスクリプション のサービスを利用して、ストリーミングやダウンロード販売など、全ての過程を自己完結するところを目標に、仕事の合間に少しずつ取り組んできていました。ブログもその一環です。コロナ関係なく、そうすることが、ミュージシャンがこれからの時代を生きるために、必要になると思ったからです。それらはある程度、形としては実現することができました。

表面的には、本当に「形として」です。収益など含めた、成果としてみれば、なんにも実現できていないように見えるかもしれません。でも、その「形を作る」ということが、今年はとても大事でした。

「新しい生活様式」ということと、「オンライン」という言葉が常に念頭にあり、これに関して、最初は全てネットの中で完結できるようにしなければいけない、と思い、その部分で、初めて経験することが多く、本当に「こんなに大変なものなのか?」と思うことの連続でした。いろんな方に何度も質問して、多くの場面で、皆さん快く教えていただきました。

たとえば、ツイッターなどでも、フォロワーが何千人といる方はたくさんいます。万単位の方も、少なくありません。しかも皆さん、有名人の人もいれば、一般人の方や、音楽活動はやっているけれどまだまだこれから、という方もいるわけです。僕は元々、フォロワーを増やそうという発想は全く持っていなかったのですが、そういうことも気にし始めました。興味がなかったことなので、当然自分には、性格的にも向いていないことでした。

「どうやったら、こんなに人が集められるのだろう? まずそれができなければ、何も始まらないのではないか?」と思いましたが、自分はなかなかこれができない 笑 というか、他の方々は、何年もかけて、今の状態を築き上げているのだから、すぐにできなくて当たり前なのですが。戦う前から負けているように感じ、本当に、ミュージシャンとして全てにおいて、他の方々と比べて、後ろに取り残されているのではないか、と、落胆していた時期も確かにありました。これからはそういう時代なのだから、プライドを捨てなければいけない、と思いましたが、今まで頑張って築いてきたものは何だったのだろう、という気持ちもすごくありました。

気持ちが切り替わったのは、オンライン環境を整えたり、サブスクリプション での楽曲リリースなどが落ち着いたあたりからで、普段から仕事としてやっている、メジャー・アーティストの案件に、復帰するようになってからです。(数ヶ月間、自主的にお休みしておりました)

そしたら、これが本当に楽しい楽しい、「メジャー」というのは、確かにいろんなこともありますが、あの「パーっと突き抜ける」感じは、本当に独特のものです。そして人から、自分という人間、自分の作る音楽を頼りにされる。ネットでは泣かず飛ばずなのが(もちろん自分を応援してくださる、大切な人たちにも出会いました)、リアルな世界では、必要とされる自分を見つけ出すことができたのです。

メジャーの作曲の仕事というのは、書いた作品が世に出るまでの途中過程、ものすごく厳しいものがあります。そして、クライアントに頼りにされているからといって、作った作品が、全て結果に結びつくとも言えません。これが耐えきれなくて、また結果を出せなくて、そのフィールドで活動することを諦める人は、本当に数えきれないほどたくさんいます。しかし、僕はその仕事を再開することで、自分を取り戻し、曲を作ることに感謝を見出すことができました。

そして、多かれ少なかれ、サブスクリプションで楽曲をリリースしたり、オンライン環境をはじめ、制作環境を整えるための数ヶ月間、というのが、その後の楽曲制作に、ものすごく役立ちました。今まで流れ作業的に(もちろんある程度のクオリティは保ちながらですが)やってきた工程を、この時期にかなり客観的にみることができました。その結果、自分の中で、スキル的にもっと伸ばさなきゃ、と感じていたことのいくつかを、かなり解消することができました。これは幸か不幸か、コロナ禍というものがなければ、なかなかできなかったことです。

また、今まで、いかに一年間でたくさんの曲を書くか、ということを重視して仕事しておりましたが(といっても、僕は元々そんなにスピーディに書く方ではありませんが)、曲数よりも、クオリティを重視する方向性に切り替えました。曲数は、今まで仕事してきた中で、今の時点でかなり貯まっています。曲数よりも「勝てる曲」を増やすことの方が、今は大事だと思ったからです。

そうしているうちに、あることに気付きました。今まで、オンライン、オンライン、といかにしてネットで完結しなければ、と考えていたのが、自分の場合は、せっかくメジャー作品を今まで書いてきて、これからもそういう可能性のある場所にいるんだから、その二つを、点と点なのを「線」として結び付けていけばいいんじゃないか、そうすることで、双方の仕事の成果が、グンとアップするのではないか、ということです。もちろん、これはこの仕事をやっている人なら、誰でも思うことだし、僕も元々思っていたことです。しかし「理屈で理解している」のと、「体験を得て実感する」というのは、全く違うことでした。

通常の作曲の仕事は、今年後半は、ありがたいことにかなり良い流れで進めてこれています。(発表できるのは来年になるものがほとんどですが) でも音楽業界は、今本当に大変です。ただでさえ厳しかったのが、経済的にも弱っている人が多い中で、音楽を聴いていただく時代になるのですから。その部分でやはり、音楽業界での仕事と、自己完結してやっていく音楽の仕事、というのを、「点と点を線で結び付けていく」ということが、これからの課題です。

でも、絶対に可能だと思います。自分の持っている特性、強みを生かしながら、時代に合った音楽を作り、時代に合った働き方というのを実践していこう、と思います。大事なのは、焦らないこと、土台をしっかり築いていくことです。

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