その36 プロの作詞家

2003年当時)
 
トワさんに仮歌をお願いできることが決まった頃、、思わぬ形で他にも強力な協力者に恵まれることになった。
 
音楽製作のレクチャーを受けるようになった頃、僕は、
 
「インターネットでオケを送って、それを受け取った人がオケに合わせて歌を歌い、ボーカルデータだけ送り返してもらったら、離れた場所にいる人同士で、デモが完成するのではないか?」
 
と、考え始めた。
 
今でこそ、これは仮歌やギターを入れる作業などで、当たり前のように行われているが、この当時は、ファイル転送サービスもほとんどなく(あっても有料であったり)、また、メールに添付して送ることのできる、データの容量も、とても小さかった。
 
なので、大方の場合、歌入れをしていただく時は、オケの入ったMDや楽譜を、実際に手渡しで届けるか、郵送で送っていた。そして日程を決めて、家に来てもらって歌っていただく。完成したデモは、やはりCD-RMDを郵送で送るか、事務所まで出歩いて渡していた。今だと信じられないかもしれないが、実際そうしていた。(製作環境が充実しているプロフェッショナルな人は、もっと進んだやり方をしていたのかもしれない)
 
この方法だと、データの受け渡しでかなり時間のロスがあり、実際に製作に当てられる時間が限られる。ラフアレンジだとできるかもしれないが、コンペで受かる曲は、この頃既にかなり完成度の高いアレンジが要求されることが多くなっていた。
 
将来的なことを考え、まずは小さなデータ、mp3をひたすら音質を下げ、メール添付で知り合いに送ることを試そうとした。
 
しかし、僕の方では送信が成功しても、相手には何度やっても全く届かない。。
 
そこで、数年来何かとお世話になっている、作詞家の遠藤幸三先生にmp3を送り、無事につくかどうか、確認していただくことにした。
 
遠藤幸三先生は、「おかあさんといっしょ」の「ぞうさんのあくび」「シマウマぐるぐる」などはじめ、誰でも知っているような子どもの歌を、たくさん作詞している方だ。それだけでなく、稲垣潤一さんや都はるみさんなど、ポップスや演歌なども多数手がけていて、作詞本も多数書かれていた。僕にとっては雲の上のような人だった。
 
 
 
 
実はオールディーズの仕事をする前、少しだけ作曲系のミュージックスクールに通ったことがあるのだが、その時に作詞を教えていただいたのが遠藤先生だった。
 
作詞の授業は、いろんなレベルの生徒が受講していたが、この先生すごいなと思ったことは、正直(僕も含め)取るに足りないような、何をどうアドバイスしたらいいのか、分からないような作品に対しても、一人一人、良いところを見つけて、褒めてくださったことだ。そして、足りていない部分に関しても、頭ごなしに否定したりはせず、「ここをこうしたら、良くなるんじゃないかな?」と、相手が前向きになるような形でアドバイスしてくださった。誰に対しても。しかし、優しい先生ではあったが、作品の質に対しては、かなりシビアな面も持ち合わせていた。
 
卒業してからも、時々今作っているデモを聴いていただいたり、悩みを聞いてくださったり、本当にお世話になっていた。しかし、この時点で、先生と一緒に何か仕事したり、歌詞を書いてほしいなど、そういう発想は全くなかった。
 
果たして、、僕のmp3は、遠藤先生のメールアドレスに無事に届いた。しばらくして、返事が来た。
 
「すごくいい! また何回か聞いてみようと思っている」

(前回) その35 仮歌

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