その44 うまい話はない

2003 2004年当時)
 
N社長なんだけれど、、君、連絡取れてる?」
 
Kさんが言った。
 
「それが、最近メールしても返事が来ないし、電話しても出ないんですよ。」
 
「そうだよね。実は・・・」
 
Kさんが言うには、どうやらN社長は、お金を払うべき多くの人に払わないまま、雲隠れしてしまったらしい。
 
「それで、君、相撲関連の歌の制作で、ティムとスミスの歌唱指導もやってるよね?」
 
Kさんとはかなり久し振りにお話したので、この活動を知っていたことに驚いた。
 
「あれも、『本来はノイ君にちゃんと講師料払わなければだめだよ』と、Nさんに今まで何回も言ってきたんだ。」
 
ちゃんとそう思ってくれている人がいたんだ、とちょっとホッとした。
 
「我々もお金を払ってもらっていないんだけれど、僕らだとNさんは警戒して出ないんだ。君が電話して、もし繋がったら、催促してほしい。あと、君がNさんにメールしているアドレスは事務所ので、多分もう見ない。Nさん個人のメアド教えるから、そこに何度も催促してくれ。我々もするから。」
 
「はい、分かりました!」
 
Kさんは穏やかな紳士で、全くこわい人ではないです 笑)
 
ちょっと勇気を出して、N社長に電話した。何度目かでやっと繋がった。
 
Nさん、ティムとスミスの件ですが・・・」
 
「ああ・・・、あれは、二人が、もう少ししっかり歌えるようになってからだ。それまではノイちゃんに付いてもらって、今まで通り練習してもらおうと思って。」
 
嘘だ。ごまかして、全く先の見えない仕事を、人に延々とやらせるつもりなのだろうか? 僕だけでなく、ティムとスミスに失礼にも程がある。
 
Nさん、、、実はKさんから事情を全部聞いているのですが・・・」
 
電話越しに、普段コワモテのNさんがたじろいだのを感じた。僕はちょっときつめに言った。
 
「今までのボーカルレッスン料の請求書送りますから、絶対に払ってくださいね。ごまかしたりしないでくださいね。絶対に、ですよ。」
 
「分かった、分かった、、、」
 
それ以来、、、N社長には全く電話が通じなくなり、メールも返って来なくなった。
 
腹が立ったけれど、、、ちょっとホッとした。これからは、アーティストの作曲コンペや楽曲プレゼンに集中して、良い曲を黙々と書いていこう。
 
ティムとスミスには、本当に申し訳ない気持ちで、事の次第を伝えた。びっくりしていたが、二人とも人間ができている人だったので、事情を呑み込んでくれた。
 
二人にも、それ以来全く会っていない。多分、今も元気にお店をやってらっしゃると思う。いつかもう一度、陽気で真面目でハートフルな、ガーナの人たちに会えたらいいな。

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