その37 初めてのDAWレコーディング

2003年当時)
 
mp3をメールで送れるかどうか、一緒に確認してもらう、そんなひょんな経緯で、かねてからお世話になっていた、作詞家の遠藤幸三先生にも作品作りに協力してくださることになった。
 
mp3を送ったのは、決して下心のようなものではなかったので、まさかそこで歌詞を書いていただけるようになるとは思っていなかった。もし、そのmp3が知り合いに普通に届いていたら、こういう状況にはならなかった。
 
その流れで、先生に教えていただいていたミュージックスクールに、数年前まで在籍していた女性ボーカリストさんのエリカさんにも、デモの歌入れに協力してもらうことになった。ライブハウスでお願いしたトワさんとは全くタイプが違うが、大人っぽい色気のある素晴らしい歌を歌う人で、当時まだ十代の可愛らしい人だった。(トワさんはキュートな声で超絶テクニックを持っていた。)
 
余談だが、当時は今と比べて、一人でデモを作れる環境、知識を持っている人が、とても少なかった。なので、「仮歌を歌う」ということは、作曲家のためにもなるけれど、同時に、メジャー志向のボーカリストさんにとっても、レコード会社に「確実に自分の歌を聴いてもらう」機会ができる、という意味合いがとても強かった。有名なアーティストさんでも、きっかけが作曲家の仮歌だった、という人も少なくない。
 
なので「仮歌が仕事」という人よりも、「仮歌のその先の仕事」を取るために歌う、そういう意識を持っている人がとても多かった。実際、元々僕が仮歌をお願いしていた方で、それがきっかけで業界に入り、今大活躍している人がいる。
 
それまで手薄だった、作詞家さんとボーカリストさんが、一気にパワー・アップした。腕もハートも皆素晴らしい人達だった。作品も歌詞も含めて、どんどん強力なものができていった。
 
そして、、、音楽製作のレクチャーを受け始めてから、ついにデモに歌を入れる機会が来た。それまでのMTRではなく、ノートパソコン(ローンで買った、Power Book G4)のハードディスク内に、歌データを入れていくのだ。その日、僕のマンションにはトワさんと、そして遠藤先生も来ていた。
 
トワさんが歌い始めると、MOTU DP3の画面に、赤い波形が流れ出した。

(前回) その36 プロの作詞家

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